知己

2017-02-28

2月下旬の北京は、寒い冬が過ぎ去り、温かい春の足音が近づいてきています。「春の短く美しい時間を大事にしてください」と言われますが、そんな中、心を温めてくれる人との出会いや友情はとても大事なものです。特に、人生の道のりで自分に温かさと力を与えてくれる「知己」と出会えば、何より幸福なことでしょう。そこで、今回の中国メロディーは、知己にまつわる音楽をお伝えしましょう。

高山流水、知音と出会う

中国には「天下に一知己を得れば足る」という諺があります。また、知己にかかわる一番有名な物語は、兪伯牙と鍾子期の友情を描いたものです。今から2000年前、春秋戦国時代の楚の国には兪伯牙という人がいて、琴の演奏に長けていましたが、常に自分の音楽を理解してくれる人がいないことを残念に思っていました。そんなある日、楚の国へ向かう彼が舟の上で「流水」という曲を奏でている時に、鍾子期という木こりが彼の演奏を聴いて、「すばらしい、まるで広大な長江か黄河のようだ」と曲の内容を言い当てました。そして、伯牙が即興で「高山」という曲を奏でると、子期は「なんとなんと雄大な山よ」と言い当て、伯牙はとても感激し、二人は心を許しあえる無二の親友となりました。

その後、子期が没すると、伯牙は「もはや琴を聞かせる人はいない」といって、琴を破り、弦を断って、それ以来ふたたび琴を弾くことはありませんでした。

李白と杜甫

兪伯牙と鐘子期が音楽を通して知己になり、李白と杜甫は詩歌を通して深い友情を結びました。李白と杜甫は共に唐の偉大な詩人で、同じ不遇な生涯を背負っていたことから、互いに重んじ、無二の親友となりました。二人は連れだって祖国の麗しい山河を見て回り、兄弟のように心が通じ合っていました。二人の詩人は互いに詩を贈り合い、その真摯な友情を表しました。

杜甫の五言古詩「夢李白(李白を夢む)」の中の「浮雲終日行、遊子久不至 三夜頻夢君、情親見君意(浮雲は一日中流れているのに、あなたになかなか会えない。三日三晩あなたの夢を見た。夢のなかではあなたの温かい志に接することができた)」という詩句は、杜甫の李白への思いをしみじみと表しました。

一方、杜甫より11歳年上の李白も杜甫を尊敬し、その五言の「沙丘城下寄杜甫」では二人の深い友情を記しました。

士は己を知る者のために死し

中国では「士为知己者死,女为悦己者容(士は己を知る者のために死し、女は己を悦ぶ者のために容づくる)」と言う名句が広く伝えられています。つまり、男子たるもの、自分の真価を認めてくれる人のためには、命を投げ出してでも応えるものであり、女性は自分を愛してくれる者のために美しく化粧をしたり装ったりするという意味です。これも古来より多くの中国の知識人の人生から生み出された理念です。

三国時代、仁德で知られる蜀の劉備は、三顧の礼をもって諸葛孔明を迎え、「私が孔明を得たのは魚が水を得たようなものなのだ」と言いました。孔明は劉備の姿勢に感激し、生涯に渡って、劉備の大義のために仕えました。劉備が亡くなった後も、その子の劉禅を支えるため、北伐を行い、戦場の五丈原で亡くなりました。

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