中日文化の間を「泳ぐ」作家毛丹青(二)

2017-05-26

作家・毛丹青は微信(Wechat)の公式アカウントで、自分のことを「日本で暮らす作家で、神戸国際大学の教授。日常生活をメインにし、日本文化の細部について描写することだけにこだわっているのではなく、他のことについても書くこともあるものの、主に日本人に対する理解を目的としている」と紹介している。(文:徐敏。済南日報掲載)

最近、毛丹青が翻訳したお笑いタレントの又吉直樹の小説「火花」の中国語版が人民文学出版社から刊行された。「火花」は日本で、発行部数300万部という大ベストセラーとなった。今回、毛丹青が取材に応え、「火花」を翻訳することになったきっかけにやこれまでの創作のエピソード、中日文化交流などについて語ってくれた。

「中国人はかつてない規模で日本のことを知るようになっている」

日本に来て30年になる毛丹青は、中国人が日本について理解するための手助けをする文化の使者である。そんな毛丹青は、中国が日本に学ぶべきこともあれば、同じように日本が中国に学ぶべきこともあり、日本の核心となっている文化は、民族全体の継続的な発展を支える原動力となっているとの見方を示す。毛丹青の中日文化交流の面における貢献は決して軽視できない。

現在、中国では日本旅行が、日本では中国旅行が人気となっていることについて、毛丹青は、「現在、日本のことを知りたいと思い、それを行動に移すという流れが中国の家庭にまで浸透している。元々中日関係というのは政府同士の関係から始まった。その最も初期の例が、1972年の中日国交正常化で、それは政治家たちが主導した。しかし、今はかつてない規模の学生や教師、ファミリーが日本に旅行に行っており、今後もその勢いは増すばかりと見られる」との見方を示す。

そして、「中国が日本のことをこれほどの規模で理解しているというのは、歴史上で初めてことで、エリート意識もない。数百万人が日本を旅行するとなると、東京や大阪などの大都市のことを知るというレベルにはとどまらず、中国人は日本人の生活全体をリアルに知るようになっている。エリート層ではなく、一般市民が実際の体験を通して、日本のことを波が呑み込むかのうように理解するというのはこれまでになかったことで、中国はこれまでに経験したことがないほどの規模で日本を理解するようになっている。例えば、私は日本の作家・又吉直樹の小説『火花』を翻訳している時に、両国は文化交流を深く行っており、互いに相手のことをよく知るようになっていると感じた。昔なら中国人が日本の文学作品を読むと、畳や日本酒、下駄などの日本特有のものが登場し、距離を感じた。しかし、『火花』が描写している世界は中国人も自分の生活と照らし合わせやすく、描写されている地下鉄や公園、バーなども、全く違和感がない」と説明する。

このように日本のことを深く理解するようになっているため、毛丹青は、「中国人が日本を旅行しても、以前のように観光スポットをざっと見て回るだけにとどまらず、日本について理性的、かつ客観的に理解するようにもなっている。現在、日本旅行のリピーターが増えていることを、いろんな数字が示している。多くの中国人が日本の文化の中には自分たちが成長するうえで、助けになるものがあることに少しずつ気付いている」と指摘する。

また、毛丹青は授業において、日本人生徒に中国文化を余すところなく紹介している。例えば、中国中央テレビ(CCTV) の人気グルメドキュメンタリー「舌の上で味わう中国(原題:舌尖上的中国)を授業中に流すことがあり、生徒たちは、中国人が一般的な食材を使ってバラエティに富んだ料理を作ることができることに、驚きを隠さないという。毛丹青は、「主食を紹介する回で、目隠しを付けられたロバが臼をひくシーンが何度も出てきた。80後(1980年代生まれ)や90後(90年代生まれ)の日本の学生にとっては、見たことがないものであるため、とても興味深いようだ。同番組を見て、中国の文化は奥深く、日本の映画やテレビ番組で見る、北京、広州、上海のホテルや高級車ばかりが中国の全てではないことを生徒たちは初めて知る」と語った。(次回につづく)(編集KN)

「人民網日本語版」2017年5月25日

人民网日本语版

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