漫画に託した北京の夢、佐々木ディエゴ剛実さん

2017-10-13

北京で唯一の中国人と日本人を対象にした漫画サークル「北京漫画研究会」を主催している佐々木ディエゴ剛実さん。現在、対外経済貿易大学に通う3年生だ。中国でも特に「80後」、「90後」と言われる10代から30代までの若い層に圧倒的な人気を誇る日本アニメだが、佐々木さんにこのサークルを立ち上げた経緯や中国のアニメ事情などについて伺った。

■日本人だらけの上海での高校生活  ぬるかった環境を反省

――――― もともと中国に来ることになったのはどういう経緯からですか?

中国に初めて来たのは、中学校を卒業して、上海の高校に入学した時です。でも最初は、親にちょっとそそのかされたという感じで。(笑)

中学3年で進学先を決めるとき、今思うと中3の考えなので多少甘いのですが、何か手に職をつけたいと思っていました。例えば、料理人だったら、一般的には高校卒業後に専門学校に通って、そこからだいたい20歳頃からのスタートですよね。それをもし高校へ行かずに、15歳ぐらいから始めれば、すごく特別な才能がなくても、先に5年間スタートした分、そういった人たちに勝てて、一流になれるんじゃないかと思ってたんです。

それもあってあまり進学を考えていなかったんですが、父親から上海に外国語大学附属学校があるんだけど、上海は今後もさらに経済が発展していく可能性が高いので、中国語を勉強していて損はないんじゃないかと勧められ、じゃ行こうかと決心しました。

―――――高校から中国に行くことに戸惑いはなかったんですか?

外国だから何か特別だとか思ってなかったですし、特に悪いイメージはなかったです。僕はハーフで母親がブラジル人ですし、外国人には慣れていることもあり、中学3年の時から外国や外国人に対する恐怖や不安感というのは全くありませんでした。

―――――実際に、来て見るとどうでしたか?どんな高校生活だったのでしょうか。

実は入学した高校は上海外交大学付属高等学校の国際部という本科とは別の枠組みの、留学生オンリーの学部だったんです。それもあって、大体、全体の8、9割ぐらいが日本人で、残りは韓国人や香港・台湾から来た人たちでした。国際部は一学年で多くて40人、少なくて10人という、かなりこじんまりとした学校で、大きな上海という街の中の非常に小さなコミュニティで過ごしていました。

しかも学校では寮の中にずっといるので、日々の生活圏も寮と学校の教室の間を行き帰りするだけという非常に限られたものでした。寮も一階から十数階まであるんですが、1フロアすべてが日本人。このように中国人と日本人を含む外国人が学校内で完全に分けられていて、自分が非常に積極的に関わろうとしない限り、中国人と交流できるシステムではありませんでした。

中国語は、最初ぐんと行って、その後横ばいでした。やはり中国人との生の交流が限られていたので後半伸びなかったですね。学校の授業はすごく簡単で、高校の卒業資格は旧HSKの3級を取ればいいというものでした。高校一年生の時にすぐに3級を取ったので、もうそれで卒業できる資格を確保してしまい、どんなに遅い人でも、2年生の後半には取ってしまうので、勉強は本当に簡単でした。高校生活は本当にぬるい環境の中で過ごしていました。

―――――そこから、北京の大学に入学されたのは、どういう考えだったのですか?

もともと高校を卒業したら、日本で大学に行こうと思っていました。ただ、帰国子女を受け入れている大学の中で、中国語を認めているところがあまり多くなかったんです。あっても、限られた私立大学だけで、国立はもちろんなくて、選択肢があまりないことがわかりました。さらに帰国子女を受け入れている学部も商学部や経済学部、経営学部ぐらいしかありませんでした。それもあって、日本の大学で4年間過ごすよりは、中国で大学に行ったほうが面白い体験ができるんじゃないかと思ったんです。それに、日本の大学生って毎日適当に授業に行って、バイトして、そのお金で遊んでいるだけといった、つまらなさそうなイメージだったこともあります。それで、高校の時とは異なり、北京留学は自分の意思で決めました。大学先も貿易、経済に興味があったのと、中国の経済を知りたかったので、一人でネットで情報を調べて対外経済貿易大学に決めました。

―――――北京の大学には自分の意思で決めたんですね。来る前は、どういった大学生活を送ることを夢見てたんでしょうか。

高校は小さなコミュニティーに閉じこもっていて、そこから飛び出す勇気もありませんでした。せっかく中国に来たのに中国人の友人も作れず、中国語も3年かけたほどの能力もない。このまま帰るのは中途半端だなという後悔がずっとありました。再び甘い環境になるのが嫌で、上海ではなく、全く知り合いもいない新天地の北京に行こうと思ったんです。だから、北京で最初に思ったのは、高校の時に出来なかった中国人の交友関係を築くことでした。

あと、当たり前ですけど、中国語能力をあげること。でも、中国語を会得することが目的なのではなく、中国語で何かできるようになることでした。正直、中国語を話せる人はそこらじゅうにいますし、5、6カ国語を話せるのならまた話は別ですけど、2、3カ国語話せるぐらいならたいしたことないですよね。だから、中国語を使って何か北京でやったという自分なりの実績を残したいと思っていました。

―――――実際、北京での大学生活はどうでしたか?中国人の友人はすぐに出来ました?

北京の大学に本科生として入学したので、当然中国人と一緒に授業を受けるのだろうと期待していたら、実は1、2年生は留学生と中国人は別で、3、4年生以降からやっと一緒になるというカリキュラムだったんです。本科生でも外国人と中国人は別なんだと知って、正直がっかりしました。高校の時と比較すると、周りは日本人ではなくなりましたが、中国にいるのに、やはり周りは外国人だらけという状態だったので、なかなか簡単に中国人の友人ができる環境ではありませんでした。

―――――確かに、中国では、外国人と中国人が別扱いにされることが多いので、中国人の友人を作ろうと思うと自らかなり積極的に動かないとダメですよね。

そうなんです。ただ、そんな状況でしたが、とにかく中国人との交流を広げようと思って、まずしたことは、図書館に行くことでした。そこには、例えば日本語の語学交流の友人募集といった貼り紙があるので、そういうのを見て、中国人に連絡してみました。でも正直あんまり楽しくなかったんです。1週間に1度話すだけで共通の話題もあまりなく、自分の中でしっくりきませんでした。

だったら、スポーツが好きなので、スポーツで友達を作ろうと思って、運動場とか体育館に行って、一人でバスケをして、中国人に声をかけて一緒に遊んだりしました。実際、その方法で友達もできたんですけど、スポーツで作った友達は実はしゃべる必要がないんですよ。明日も一緒にやろうとか、プレイ中に「ナイスシュート」と言うぐらいで、全然中国語を使いませんでした。あぁ、しくじった。この作戦はだめだなと。(笑)友達ができても、あんまり言葉の交流がないとまた少しがっかりしました。

それで、個人の交流が駄目なら、団体に入って交流をしようと思いつき、サークルに入ろうとしました。でも、中国の大学では、サークルの存在がどこにあるのかわからないんです。日本だったらサークルの勧誘ってもっとアピールしてますよね。でも、友達は誰もサークルに入っていなかったですし、大学内に貼り紙とかもなく、アプローチの仕方がわかりませんでした。

その時に、それだったら、自分でサークルを作ればいいんだという考えが浮かびました。最初に思いついたのはやはりスポーツでした。バスケにしろ、サッカーにしろ、始めようと思うと、人数や場所を確保しなければならないし、大変ですよね。でも、日本人向けのフリーマガジンを見てみると、スポーツ系のサークルはすでにいっぱいありました。だったら、他にはなくて、中国人が来てくれそうなものって何があるのかな?と思ったときに、アニメを思いついたんです。それをきっかけに漫研を作ろうと思い立ちました。

■オフ会では「本当にオタクなんですか?」とよく言われます。(笑)

―――――最初は、中国人の友人を作るための手段だったんですね。

そうですね。最初から漫研をどうしてもやりたくて、作ったわけではないんです。ただ、中国人との交流の場として、いったい何が中国人と共通で楽しむことができるのかと考えた時に、僕の中ではスポーツかアニメしかなくて。それに、アニメならスポーツと違って話せるぞと思ったんです。そういう意味では、「北京漫画研究会」というのは、僕が個人的に中国人との交流の場を作りたくて、作ったサークルだったんです。それが、意外と反応があって、どんどん人が集まってきて今に至っているわけです。

―――――「北京漫画研究会」では具体的にどんな活動をしているのですか?

「北京漫画研究会」のコンセプトは、アニメを通しての日中交流なのでオフ会には必ず中国人の方々に来てもらって日本人の方と交流しています。活動としては、一つ目は、どこかのお店に日本人や中国人のメンバーと集まって、日本語や中国語でアニメやゲームについて語り合うオフ会を開催することです。

二つ目は、実は北京では、ほぼ毎週のようにどこかで漫画、アニメ、ゲーム関連のイベントが開催されているので、そのイベントにメンバー同士でコスプレで参加したりしてます。

―――――佐々木さんの漫画体験はどういうものだったんですか。かなり小さい頃から漫画・アニメに夢中になっていたのでしょうか?

いいえ。小さい頃からごく自然に当たり前のように「ワンピース」とか「ナルト」は見ていましたが、アニメ・漫画体験は非常にごく一般的だったと思います。一番最初に見たアニメは、多分テレビで偶然放送していた「ワンピース」でした。ちょうど6歳ぐらいの頃ですね。漫画を読むようになったのは、小学校5、6年生ぐらいだったと思います。それも、ジャンプ系とか単行本を集めて読むぐらいでした。中学校でもたまに読むぐらいで。

それが高校に入学したら、寮にいる時間が非常に長いですし、寮にはオタクの友人がいて、名作アニメ・漫画をすごく勧めてくるんですよ。特に、中国には動画配信サービスのサイトとかもありますよね。そういう影響もあって、高校時代は以前に比べてずっとアニメを見るようになりました。でも、これは中国に留学している学生にはかなり普通に見られる現象です。みんな、留学すると、部屋にいても暇なので、アニメを見てしまうようになって、オタク化していくんです。

高校時代は、「ガンダム」とか過去の名作アニメやメジャーアニメを本当にたくさん見ました。今までガンダムとか名前は知っていても、興味がなかったので、一回も見たことがなかったんです。なので、ガンダムを見たときは、こんなに面白いアニメだったんだと正直驚きました。このほか、「スラムダンク」や「ドラゴンボール」など自分の世代ではないメジャーアニメから入って、徐々に深夜アニメに移っていきました。今気に入っている漫画は、「SOA」、「筋肉マン二世」、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」などで、言い出したら切りがないですね。

―――――そういう意味では、いわゆる一般的なオタクのイメージとは異なりますね。

そうなんです。漫研を主催してますが、本当のオタクの人たちからすると、かなりオタクレベルが低いです。オフ会とかでも「本当にオタクなんですか?」とよく聞かれます(笑)。普通の人よりは詳しいけど、オタクに比べたらというレベルですね。声優さんの名前も覚えてませんし、監督の名前とかも気にしたことはありません。本当のオタクの人は知識量が凄いです。いつも途中から会話についていけなくなります。でも、アニメは毎日見てるし、すごく好きなんですけどね。

―――――メンバーはどんな方々が集まってきたんでしょうか?

メンバーは社会人と学生半々ぐらいです。最初の頃は男女比が半々ぐらいでしたが、現在人数が増えるとともに男性の比率が少し高まってますね。中国人も3分の1近く参加してくれてます。前回のオフ会では、中国人が半分近くを占めました。

結構、オタクの人たちって、日本では気持ち悪いとか根暗とかそういうイメージが強いかもしれませんが、「北京漫画研究会」に集まってきた人たちは、見た目はいたって普通です。でも普通なんですけど、どこか普通じゃないんですよ。(笑)みんなこだわりを持っていますし、考え方が面白い。オタクといっても、色んな人たちがいて、好きなものも全然違います。少女系が好きな人や、青年系が好きな人もいますし、キャラクターにしても、天然が好きだったり、ツンデレが好きだったり。同じアニメでも、このキャラクターが好きでこのキャラクターは嫌いとか、それぞれがみんなダブってなかったりするんです。

ただ、何か共通点をあげるとしたら、アニメを真剣に見て観察して、アニメを見た感想を、みんなに伝えて発信したいという欲と共有したいという欲が強い人たちが多いんだと思います。だからこそ、「北京漫画研究会」という場所がみんなに必要とされているのかなというような気がしています。

―――――中国人のメンバーはどういう動機で「北京漫画研究会」に参加してくれているんですか?

中国人が漫画・アニメ研究会に参加する動機は、だいたいが日本のオタクと交流したいというものです。3000万人もいる北京で、1万人しかいない日本人と出会える場所や機会はなかなかありませんし、そういう中国人の方はアニメ・漫画だけでなくて、そもそも日本の文化を好きな方が多いです。アニメを通して、例えば東京だったり、大阪だったり、生活スタイルだったり、日本に関する様々な知識を得ています。漫画を通して、日本人はこういう風に考えるのかとか、東京ってこういうところなんだとかを理解しています。アニメとか漫画が好きな中国人ほど、日本に対して好感をもってくれています。

今に始まった話ではないですが、現在日中関係は良くないですよね。特に昨年の釣魚島(日本名:尖閣諸島)を国有化してからはさらに。でも、漫研に来てくれる中国人は日本文化が好きで尊重してくれているので、政治的な問題も切り離して考えてくれています。そういう意味では、こういう小さな活動も日中交流の一つになるのかなと思っています。

■アニメ・漫画には国境がない。初対面同志でも共通の話題で一気に距離が近くなる

―――――最初は中国の友人を作りたいという個人的な思いから作った「北京漫画研究会」が日中交流の一つの場として考えるようになったのはいつからなんですか?

確かに最初は、僕個人と中国人の関係を築きたくて立ち上げた漫研でしたが、それが徐々に中国人と日本人が交流できるコミュニティの場にしたいという思いに変わってきたのは、実は最初のオフ会がきっかけでした。初めてのオフ会を開催したのは、2012年3月でした。その時のメンバーは学生と駐在員が半々ぐらいで、全部で10、11人ぐらい。そのうち、中国人は、3、4人ぐらいいました。

僕自身はメンバー全員を知っていますが、自分以外の人たちはその日初めて会うことになるので、正直盛り上がるか少し心配でした。最初はやはり軽く話すぐらいで、あぁやっぱり盛り上がらないかなと思っていたところ、30分ぐらい経過したら、みんなどんどん話が盛り上がっていって、もともと2時間の予定が、3時間ぐらい話し続けていました。話題も、アニメ・漫画だけでなくて、ネットゲーム、オンラインゲーム、ボーカルロイド、カラオケなど自分が全然知らないことも含めて、多岐に渡っていました。

この時に、初対面同士でも、共通の趣味を持っていると、こんなにも簡単に盛り上がることができるんだなと感動しました。しかも、初対面というだけでなく、文化や育った背景も異なる日本人と中国人が、共通の話題でこんなにも盛り上がることができるなんて、凄いことだと感じました。最初は個人の暇つぶしぐらいの勢いだったのが、もう最初のオフ会で衝撃を受けて、今後もこのサークルをちゃんと続けていこう、みんなに楽しんでもらいたいという思いに変わりました。

―――――知らない人同士が好きな話題で盛り上がって仲良くなれるのは、外国では確かに貴重な体験ですね。

アニメ・漫画というのは、細分化されたジャンルを超えて、仲良くなれるところがいいところだと思います。そこがスポーツとは少し違います。実は、前回のオフ会には、PRTGサークル(ボードゲーム上のロールプレイングゲームをするサークル)の方にも、大きく分ければ同ジャンルで仲間だという意識で誘ってみたら、気軽にオフ会に参加してくれて、一緒に盛り上がることができました。こういうオタク文化というのは枠とか対抗心みたいなものがないところが、すごくいいなと実感しました。

昨年の7月に、湖南省の長沙で「第6回国際動漫展覧会」という漫画・アニメのイベントが行われ、そこに出展したある団体のブースのお手伝いに現地に行きました。僕は、そこでボーカルロイドやアニメについて聞かれたときに答えるサポート役をしたり、ブースを訪れた中国人に名前や年齢、好きなアニメやゲームなどを書いてもらうアンケート集めのボランティアの仕事をしたのですが、質問をする側なのに、逆に中国人から色々と質問をされて、日本人だと答えると、「えっ!?本当に?」ってみんなからすっごくびっくりされました。

でも日本人だとわかると喜んでくれて、「日本人なんだ、これ知っている?この文化知ってる?」といろいろと聞かれて、どんどん中国人がブース内に集まってきて、最後にはコスプレイヤーたちの休憩室みたいになってました。でも、アニメ・漫画という共通の話題があることで、一気に中国人の人たちとの距離が縮まり、色々なことを話したり、交流したりして、最後にはみんなで記念写真を撮ったりして、すごく楽しい時間を過ごすことができました。今でもネット上で交流が続いているんですが、このときにも、あらためてアニメ・漫画には国境がないと思いました。

―――――コスプレ活動もされてるようですが、どういったことをしているのでしょうか?

漫研メンバーの中にはコスプレしたり、見たりするのが好きな人も何名かいて、そういうメンバーがコスプレのイベント情報などを送ってくれます。面白そうなイベントの時には、漫研のメンバーに声をかけて、コスプレを見に行ったりしています。でも実は、僕自身はしたことはないんですけどね。(笑)

北京は、コスプレイベントは盛んで、毎週のようにどこかで何らかのコスプレイベントが開催されています。しかも、日本のようにイベント毎にコスプレがジャンル化されて、色々と規制されているイベントとは異なり、様々なスタイルのコスプレイヤーが参加できるので、見ていて面白いです。初心者にも楽しめると思います。今年の春には、北京文化委員会主催の「何人コスプレイヤーを集められるか?ギネスに挑戦」というイベントが対外経済貿易大学で行われたので、みんなで見に行きました。中国の最高学府と言われる清華大学には何百人もいるような非常に大きい漫画研究会があって、コスプレイヤーもたくさんいると聞いています。ただ、コスプレは、やはり重ね着をしたりするので、夏の暑い最中には向いていないですし、もちろん真冬にも向いていないので、大きなイベントはだいたい春に集中して行われます。

中国では、コスプレイヤーと普通のアニメ好きは重なっています。その理由としては、中国で見られるアニメの種類が少ないということがあります。テレビ放送されているアニメというのが第一の情報源で、あとは「ジャンプ」とか週刊誌に載っている漫画ですね。もう少しマニアックなところになると、ニコ堂とか、ボーカロイドの初音未来とか。初音未来以外の類似のボーカルロイドのコスプレも人気がありますし、あと中国では三国志系のコスプレが好きな人が多いですね。戦国武将みたいな格好をしている人とか、どこかのお姫さまみたいな格好をしている人とか、日本では通常見ないタイプのコスプレイヤーもいます。あと、みんながコスプレする場所も、基本的にコスプレイヤーのイベントの時に限られています。

―――――「北京漫画研究会」を主催する上での苦労はありますか?

苦労は、どうやったら中国人にオフ会を楽しんでもらえるかなというところですね。言葉の壁が大きいです。日本人は北京に住んでいても全員が中国語をしゃべれるわけではないんです。そのため、オフ会では自然と日本語がメインになってしまうんですが、そうすると参加してくれている中国人も少し遠慮がちになるというか、萎縮してしまうんですね。中には自分から進んで中国人に積極的に話しかけてくれる日本人の方もいるんですけど、そういう光景を見るとすごく嬉しいです。

オフ会自体は、本当に自分が何もしなくても、周りが勝手に盛り上がってくれるので、すごく苦労したということはないですね。単に、開催するまでの連絡や手配が大変なだけで、それもオフ会で周りのメンバーの方が盛り上がっているのを見ると、やって良かったなという思いに変わります。オフ会が始まれば、あとは中国人の方が楽しんでくれているかどうかをチェックするぐらいです。どうしても、中国人は少数派になってしまうので、そういうときは、僕とか副会長の青木悠くんとかが話しかけて周りの日本人を巻き込んで楽しくおしゃべりするように心がけています。

―――――佐々木さんは、あと1年半で卒業ですよね。漫研代表として今後何かやりたいと思っていることはありますか?

漫研をもっと充実させて、内容を残るものにしたいなと思っています。今では多くの人が集まってきてくれて、漫画・アニメイベントに参加したり、一緒に遊んだり、オフ会に参加したりと、楽しく運営していますが、まだ自分達で何かを作るということはやったことがないんです。だから何かを作るとか、漫画・アニメのイベント情報を発信したり、もっと日本人と中国人のオタクにとって役に立つコミュニティーとして、みんなに利用してもらえるような場を作りたいですね。あと、今は大まかに全員でオフ会をやってますけど、今後は「ジャンプ」好きな人のオフ会とか、「少女コミック」好きな人のオフ会とか、人数が増えれば、もっとジャンル化、細分化、多様化もできると思うので、組織立ったサークル作りをしたいと思ってます。

現在、北京で唯一の漫画系サークルを主催している人物ということで、どれだけすごいオタクの方が現れるのかと思いきや、実際に現れた佐々木さんは、今時のファッションに身を包んだ若者で、しかもバスケやサッカーを楽しむスポーツ好きの青年だった。自宅の部屋を拝見させてもらうと、机の周辺にも一切漫画は置かれておらず、本棚には経済や哲学、心理学の本が並び、来年受験するというToeicの参考書が机の上に山積みになっていた。漫画・アニメは大好きだけど、今やるべきことはきっちりやるというスタンスを持って、物事を冷静に分析して実行するタイプのようだ。「個人的に中国人との交友関係を築きたくて立ち上げた漫画研究会が、今ではささやかながらも一種の日中交流の場になっていることが嬉しい」と語る佐々木さんのクールな表情の裏にある、熱く優しい一面が頼もしく感じられた。このような青年がいとも簡単に国籍などを超えて未来の日中関係の架け橋になってくれるのではないかと期待せずにはいられない。

・プチアンケート

●出身地 東京都

●中国滞在歴 5年半

● 中国の食べ物で一番好きなもの マクドナルド

●中国にあって日本にないもの

土地、人口の多さ、どこにでもある屋台

●中国に来て感じた中国人と日本人の違い

他人と身内に対する境界線の引き方。

●中国人の若者と日本人の若者の違い

将来に対して、中国人の方が必死で真剣。(編集MZ)

「人民網日本語版」より

人民網日本語版

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