「さくらサイエンスプラン」発起人・沖村憲樹氏

2018-01-20

日本・アジア青少年サイエンス交流計画「さくらサイエンスプラン」の2017年度実施成果報告会が先ごろ北京で開かれた。同プランの発起人であり、長年にわたり中日両国の科学技術分野における交流や協力を積極的に進めてきた日本科学技術振興機構の沖村憲樹上席フェローがこのほど人民網のインタビューに応じ、同プランを中心とした中日両国の科学技術分野の交流について語った。人民網が伝えた。

【日本のグローバルマインドを育てる青少年交流】

記者:「さくらサイエンスプラン」の成果とは?

沖村氏:2014年にまずアジア15ヶ国から3千人を招くところからスタートし、現在までに中国人約7千人を含む、合計1万9500人以上の青少年を日本に招いています。同プランは友好を図りたいということが原点なので、参加者のほとんどが日本を好きになり、また来たいとしてくれたことが一番大きな成果です。

また日本側にとっては、中国や東南アジアの優秀で活発な方々から非常に刺激を受けました。日本はどちらかというと内向きな社会ですので、こうしたグローバルな活動は日本の青少年や大学のグローバルマインドを育てる上で、大きな効果があったと思います。

参加された中国の青少年からも、非常に刺激になり、勉強になったという評価を得ただけでなく、その4割は再度訪日し、日本へ留学を希望する参加者も少なくありません。しかも同プランへの参加をきっかけに、日本の各大学も資金を調達し、中国を訪問するなど相互交流が始まり、共同研究や論文の共同執筆、研修やシンポジウムの開催といったように様々な活動に進化してきています。このように、単純な交流だけでなく、幅広く深い交流に進化しつつあるということが、日本にとっても、中国を始めとしたアジア各国にとっても大きな成果になったのではないかと思っています。

記者:参加した中国の青少年に対する印象は?

沖村氏:まず日本の関係者が驚いているのは、中国の方が非常に優秀だという点です。同プランには高校生コースがあるのですが、中国のトップクラスの高校の最優秀の生徒を招いています。そして日本側も最高のプログラムを用意し、トップクラスの研究所に行き、ノーベル賞受賞者の講演を必ず聴講してもらい、トップクラスの大学のキャンパスを見学するコースになっています。日本の理工系のノーベル賞受賞者の方々のほとんどが同プランに協力し、講演してくださっており、講演は当然英語ですが、その質問や討議のレベルが非常に高く、その優秀さに本当に驚いています。

なかでもノーベル受賞者の白川先生は、単純な講演ではなく、生徒と共に3時間にわたる実験教室を行っています。白川先生は自ら実験メニューを考え、参加者全員に配布するための英文の実験ノートを準備し、助手を交えて事前リハーサルを2回もされています。さらに実験教室の後に提出された感想文には全て目を通されているそうです。白川先生は、実験教室におけるやりとりや感想文のレベルの高さを見て、今年は8回の実験教室を希望して実施してくださいました。しかもこれをほとんどボランティアで引き受けてくださっているのです。日本のノーベル受賞者はアジアにおいてトップを極めている方々ですが、彼らが後世に何を残したいかと考えた時、中国の優秀な青少年との真剣なやり取りにやりがいを見出し、自分のマインドをアジアや中国の優秀な青少年に伝えたいと、一生懸命取り組んでくださっています。

記者:2018年の「さくらサイエンスプラン」の目標は?

沖村氏:私は当初から、中国から青少年1万人を日本に招きたいと思い続け、まだその数には達していませんが、徐々に増加させ、2018年の日本の財政状況は極めて厳しいのですが、全体で7000人くらいに、拡大させたいと考えています。同時に、日本に単に来るだけでなく、その後の交流が活発になりつつあるので、これでようやくスタート地点に立てたと思っています。そのため、その後に続く交流を色々な形で充実し、強化していきたいと思っています。そして日中両国の科学技術交流が、相互にとって、実のあるウインウインの関係になるように発展させていきたいというのが私の希望です。

【日中科学技術交流は「面」の交流を】

記者:今回は成果報告会参加と同時に、108人からなる日本科学技術者幹部訪中団の一員としての北京を訪問されましたが、今回のような大規模な訪中団による交流への期待とは?

沖村氏:2017年7月に中国科学技術部(省)の万鋼部長が「さくらサイエンスプラン」を非常に高く評価し、中国側も日本から数百人規模の招請をしたいと言ってくださり、非常にうれしく思っています。長年、日中交流に関わっていますが、日中交流がうまくいかない一番の原因は、日本側がまだ中国のことをよく知らず、その現状やその科学技術力の高さをよくわかっていないからだと感じています。私は数年前から中国の科学技術はすでに広範な面で日本を抜き去っているばかりか、もうすぐアメリカに追いつき、追い越すとすら考えています。日本はそうした実態を踏まえ、もっと謙虚に中国と付き合わねばならないのに、中国をよくわかっていません。そんな中、万鋼部長が日本で影響力を持つ行政官や大学関係者を中国に招いてくださいました。彼らは、中国の凄まじい発展ぶりに驚き、認識を一変して帰国しております。こうした交流をさらに多く続けていけば、日本が中国をよく知るようになり、ひいては日本の将来にとって、中国と交流していかなければ日本の将来は無いことを深く認識し、交流がもっと活発になると思います。

記者:中国科技部は2016年に引き続き、日本の科学技術者幹部を中国に招待しています。2017年はその規模をさらに拡大し、北京だけでなく、グループに分かれ、西安や鄭州、上海を訪れています。こうした地方間の科学技術協力に対する考えは?

沖村氏:「さくらサイエンスプラン」は草の根を理想とし、中国の多くの研究所や大学と日本の研究所や大学が一緒になり「面」で協力することを理想としています。現在、同プランには日本側から268の機関が、中国も419の機関が参加し、中国では31の省と直轄都市、自治区全ての地域から参加してもらっています。私自身もチベットとウイグル以外の地域を全て訪問し、同プランをPRしています。国同士が本当に交流しようとしたら、主要な所を「点」でつなぐのではなく、国全体で、「面」で付き合う必要があります。そういう意味からも地方間の交流は重要であり、今後ますます深めていきたいと思っています。

記者:中日女性科学者会議がここ2年間再起動し、中日両国で科学技術者の訪問団を相互派遣しています。こうした人的交流が発揮する役割とは?

沖村氏:交流は人と人が交流することが原点だという考えから、「さくらサイエンスプラン」の他にも、「日中大学フェア&フォーラム」という大学同士の交流もやっています。「さくらサイエンスプラン」でようやく知り合え、そして徐々に大学同士で交流が始まったこの状態から、その交流をもっと活発にするための施策と工夫が必要だと考えています。そのため、こうした人的交流にはもっと力を入れていきたいと思っています。

記者:中国のここ数年の発展の変化と中日科学技術交流の現状は?

沖村氏:科学技術振興機構の理事長を始めてから、18年にわたり日中交流に携わっていますが、その中で得た結論は先ほども述べたように中国の科学技術はもう日本を抜き去っているということ。その原因は中国政府が科学技術を最も重要な政策と考えている点です。毛沢東主席の時代から、中国の科学技術政策重視の姿勢が始まっており、その姿勢にともない、第13次5カ年計画という素晴らしい計画があり、膨大な行政組織ができあがり、しかも中央政府だけでなく、地方政府に至るまできちんとした組織ができあがっています。さらに、近年は財政的にも豊かになり、非常に潤沢な資金が流れています。この財政比率は日本の5倍以上、アメリカに比べても高いのです。こうした科学技術重視の姿勢を続ける限り、中国は必ず世界に冠たる科学技術大国になるでしょう。日本は今後、中国の隣国としてもっと密接に交流していかなければ、日本の将来は無いと思っています。そういう思いから18年間ずっと日中交流に関わってきたのですが、まだまだだと感じており、これからもこうした活動に大いに力を注いでいきたいと思っています。中国の皆さんのご協力と、メディアとしての影響力をもつ人民網にもご協力をお願いいたします。

(文・玄番登史江)

「人民網日本語版」より

人民網日本語版

モデルコース
人気おすすめ