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中国の昔話・「寒気を飛ばす麺」

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時は清の時代、乾隆帝はなんと六回も長江以南を見て回ったが、これは杭の杭州にきたときのこと。乾隆帝は私服で腹心と二人の供を連れ、屋形船にのり西湖で楽しんでいた。しかし、そのうちに空模様が怪しくなり、強い風が出て大雨が降り出したので、船頭は船を近くの橋の下に漕いでいった。雨はしばらく続き、薄着していたのか乾隆帝は寒気を感じ、それに腹もすいたので熱い麺などを食べたくなった。

「ああ。雨も止みそうだのう。船頭さんや。この船でも麺は作れるだろう。すまないが熱々の麺でも作ってくれんか。体を温めたいゆえ」

これに船頭は答えた。

「ヘイ。お客人、船には小麦粉などはありますが、実はわたしどもめは南の生まれ。麺を作るのが下手で、美味く作れません。ご勘弁ください。他のものならできるでしょう」

船頭は相手が皇帝だとは知らないが、身なりやしぐさが庶民とはかけ離れているのを見て、この人物は皇族かまたは、どこかのかなりのお偉方だと思い、慎重に答えている。

これに乾隆帝は眉をひそめた。他のものでもいいが、今はどうしても麺が食べたい。そこで乾隆帝が側にいる腹心を見ると、腹心はすまなそうに首を横に振る。

「そうか。それは仕方ないのう」といくらかがっかりしていると、中から船頭の娘が顔を出し、「お客さん、たいしたものはできませんが、わたしが熱々の麺らしいものを作ります。それで我慢してくださいな」という。

これに乾隆帝は喜び、「そうか。熱々でよいのじゃ。たのむぞ」と答えた。こうして船頭の娘は、さっそく中で鍋にお湯を沸かし、この日の朝取ったばかりの川えびを一掴み鍋に入れ、小麦粉を水でこねてから、しばらく置き、それを少しづつ手に取り、指で押さえてくるりと丸めるようにして、一つ一つ鍋に入れた。そして煮えあがると、酒、生姜、葱と塩などを加え、それに胡椒をふりかけ、大きなお椀にできたものをたっぷり入れて、外で待っている乾隆帝に出した。

こちら乾隆帝、熱々のものが来たので箸を取ったが、普通の麺は長細いのに、これは一つ一つばらばらになり、かわいい耳のように浮かんでいる。

「うん?これは麺か?」と側にいる船頭の娘に聞く。これに娘は答えた。

「お客さん。わたしたち南のものは麺というものをあまり作らないのでうまくできません。でも、それは亡くなった母がいつかそれに似たようなものを作ったことがあったので、さっき試しに作ってみただけです。それに、お客さんは体が冷えるのでは?そうだったが、冷めないうちに早く食べて体を温めてくださいな」

この娘の言葉に乾隆帝はにっこり。気の利く娘だと思い、さっそくふうふう息をかけながら熱い汁を一口。

「うん、この汁はいい」と箸で浮かんでいるものを口に運んだ。するとどうだろう。その耳のようなものは、つるつるしており、まわりはやわらかく、中は腰があるというか、歯ごたえがある。

「うん、うん!これは食べやすいのう」と乾隆帝は、腹が減っていたせいもあって、それをきれいに平らげてしまった。

これをみて娘はにっこり。

「お客さん、体は温まりましたか?」

「うん、うん。これはうまいものじゃった。おかげで寒気が飛んだぞや」

「それはそれは」

「ところで。娘よ。この麺?麺じゃろうが、この麺はなんという?」

「え?この麺ですか・・。実は作りながら工夫したので、なんと呼んでいいのかわかりません」

「そうか?うん・・」と乾隆帝が苦笑いしているときに、娘が飼っている子猫がかわいい声を出しながら走りでてきた。これを見た娘は自分の作ったものが猫の耳の形をしていたので目を輝かせて言う。

「お客さん、いま食べたもの、あの猫の耳に似ていませんでした?」

「そうじゃな。あれは猫の耳のようじゃったな」

「お客さん、どうです。あの麺を猫の耳と呼んだら?」

「うん。猫の耳か、うん、うん。それはいい」と乾隆帝も大喜び。こうして乾隆帝は気分も良くなり、麺を食べたお代をたっぷり腹心に出させ、雨上がりの青空と岸辺の景色を眺め、上機嫌で船から下りた。

さて、この賢い娘は、このときのことがきっかけで、父の船頭に頼んで岸辺に小さな店を開き、この「猫の耳」つまり「猫耳朶」を売り出したところ、これは珍しく、美味いという評判があり、店は繁盛し始めた。その後、誰がどこから聞きだしたのか、あの時船でこの「猫耳朶」を食べたのが、乾隆帝だということがわかり、これもあって、この「猫耳朶」は急に名が伝わり、他の人も真似をしてこの麺を作る店をたてたので、「猫耳朶」は名物になったとさ。


「中国国際放送局」より

中国国際放送局

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