「恐竜博士」になりたくて

2016-08-05

地質・資源・環境などを中心に研究が行われる政府の重点校、中国地質大学(北京)の博士課程で、約6,500万年昔の巨大生物、恐竜を研究する日本人女性がいる。甘粛省や遼寧省といった恐竜の化石が多く出土する地域の山間部や砂漠に入っては、男性陣に混じってハンマーやたがねといった道具を用いた力作業もこなす。今回は恐竜に魅せられ、中国の大地を駆け巡る逞しい女性古生物研究者、黒須球子さんをご紹介したい。

「なんてカッコイイんだ」。両親に連れられ訪れた上野の国立科学博物館で、巨大で凶暴な姿の生き物のオブジェを生まれて初めて目の当たりにした時、恐怖ではなく、何か大きな感動が幼い黒須さんの小さな身体を満たした。「恐竜の研究者になりたい」、周りのどの女の子も描かない夢を描き、大学院では古生物学を専攻、中国やカナダなど、世界各地の発掘現場を訪れては採掘作業に汗を流し、太古の生物の化石と向き合う日々を過ごした。中でも、恐竜の化石発掘ツアーで中国内モンゴルに広がる大草原を訪れた際は、到着して車を降りたそのすぐ足元から至る所に点在する化石の数々に、「なんて凄い場所なんだ。ここなら毎日恐竜の研究だけしていられる・・・」とその規模の壮大さに感銘を受けたことを、今でも鮮明に覚えている。中国との縁を結んだのはこの時だ。後日、大学の先生に「中国から権威ある古生物学の教授が来られる」と言われ、内モンゴルでの感動が蘇ってか、即紹介をお願いした。そうして出会ったのが、現在黒須さんの指導教官を務める中国地質科学研究所の季強(ジー・チャン)研究員だ。中華竜鳥(シノサウロプテリクス)や最古の有胎盤哺乳類ジュライマイアなどを初めとする数多くの研究を手がけ、NHK「生命大躍進」の監修も務める人物で、中国きっての恐竜博士だ。

季教授は、「中国で発掘される恐竜の化石の種類は、今や米国を抜いて世界一。正真正銘の恐竜研究強国となっている。中国と日本は生物地理学的に似通っているので、黒須さんも中国での研究はやりやすいだろう。中国を選んで正解だったと思う。修了までどんどん研究を発表していってもらいたい」と黒須さんを激励する。

季教授の指導の下、黒須さんは中国地質大学の修士課程、博士課程で小型肉食恐竜の研究に勤しんでいる。「日本列島はプレートの境目に位置するということや、火山地帯であるといったことから、化石が溶けたり変形したりしているため、なかなか化石が発掘されない。それに対して中国は、保存状態の良好な化石が残る土地が続いているため、恐竜研究には最高の場所。それにも関わらず、中国での恐竜研究はまだ始まったばかりなので、研究者にとってここは宝の山」と目を輝かせる。ドロマエオサウルスという名の恐竜を専門的に研究しており、その魅力については、「肉食恐竜の頭の骨の形も生き方も魅力的。ドロマエオサウルスは鋭い爪と機敏な動き、身体の割りに頭が大きく非常に賢いことが特徴で、色のある羽毛が確認されているのは他に類を見ない」と、まるで愛しい飼い犬を見るような優しい眼差しでその化石を見つめながら笑顔で語る。実は鳥は恐竜に一番近い仲間で、「この恐竜を研究することは、鳥類の進化を解明する鍵にもなる」ため、普段から鳥を見るだけで、「今日も現代の恐竜が歩いてるな」と、楽しい気持ちになり、同校の立派な恐竜博物館も、黒須さんにとっても「散歩コース」の一つで、恐竜を眺めていると癒されるという。

恐竜と生きる黒須さんの今後の目標は、当然恐竜研究で成果を挙げることだ。「恐竜の研究は欧州や北米を中心に発展しきたため、アジアでの研究はまだまだ進んでいない。今後は中国や日本を含むアジア全体の恐竜研究を盛り上げていきたい」と話す。仮にこのまま博士号を取得して正式な研究者となった暁には、黒須さんは日本人女性初の恐竜研究者となるかもしれない。そうした情況に、「中国では女性がエネルギーに満ち溢れている。日本の女性ももっと頑張ってほしい」と日本の女性にエールを送った。(岩崎元地)

「人民網日本語版」

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