天津泥人張

2012-07-26

泥塑の名でも知られる天津泥人張は、中国で最も有名な泥人形工芸である。細かく丁寧な彩色の特徴から、天津泥人張彩塑とも呼ばれている。歴史的には江蘇省の恵山泥人形の方が古いが、知名度、質の高さから名実ともに“一番”といわれるのは天津泥人形である。

張明山(1826-1906)は、泥人張の生みの親として知られている。張明山は幼い頃から父に習って泥人形を作り、抜群の腕前をもっていた。十八歳で“泥人張”と呼ばれるようになり、家族経営の泥人工房を開く。彼は客の前に座り話しながら、顔色一つ変えず、あっという間に表情、形も実物そっくりの人形を作り上げることができたという。たんなる子供の玩具や農民の娯楽であった泥人形は、張明山の手によって芸術的な美術品に発展した。天津の泥人張は中国全土に知られるようになり、かの西太后も好んで彼の作る泥人形を収集したと言われる。張明山は90年の生涯をかけて千個以上の泥人形を創作したという。

泥人形の主な材料は、不純物の少ない赤みを帯びた粘土である。強度を上げるために綿花を混ぜて金槌で打ち柔らかい“熟泥”にして使用する。木材、つる、針金、紙、絹などが補材として使われる。竹棒、ヘラなどを使って人形のかたちを作るが、頭の形、顔の表情に最も気を使い、時間をかけて丁寧に作られる。しっかりと乾燥させてから700度の釜で焼成し、磨きをかけ、細部まで着色して完成する。一体の泥人形を作るには一般的に三十日間かかるという。

泥人張の題材は、民間風俗を反映したものや民話伝説、故事、舞台戯曲の登場人物などである。古典文学の“水滸”“紅楼夢”“三国志”などが代表的である。外見がそっくりなだけでなく、表情、動きが自然で今にも動き出しそうな跳躍感にあふれているのが特徴だ。各色の顔料を使って、明るい色調で細かく着色される。

張明山は独学で中国伝統絵画や、石彫刻、木版年画、京劇、文学などを学んでおり、それらの工芸美術が泥人張に与えた影響は大きい。西洋の写実主義を取り入れ、ほか地域の泥人形とは明らかに一線を画している。

張明山の子孫達は彼の技術を受け継ぎ、創意工夫を重ねて泥人形は進化を続けている。家庭営業であった張氏の泥人工房は、中華人民共和国(1949~)の成立後、国営の天津泥人彩塑工作室と名を変えた。現在、張明山の四代目子孫にあたる張志忠氏が工作室で指導し、また積極的に創作を続けている。

天津泥人張は、国内外の多くの博物館に所蔵され各地で観覧することができる。中国を代表する伝統工芸美術に発達した張明山の泥人形は、精巧に再現された豊かな表情で多くの人々を魅了している。

北京旅游网

モデルコース
人気おすすめ