布老虎

2012-07-23

中国の伝統的な民間玩具は、近代的なゲームやおもちゃが蔓延する現代においても、未だ多くの子供達から愛され親しまれている。布で作った虎の形をした玩具の布老虎は、その代表的なものである。

中国古代では、虎は悪を追い払い家族の富を守るシンボルとして扱われていた。なぜ虎が布製玩具の主流となったかについては、様々な言い伝えがある。虎は野獣の王であり村の守り神とされたことや、黄色い額の三本の黒い線模様が“王”の漢字に似て見えるという理由がある。

中国では旧暦五月五日の端午節に、子供の為に布製の虎を作り、また子供の額に虎の顔や“王”という字を書いて、健康で強く勇気のある人間になるように願う風習がある。伝統的に新生児が生まれた三日目、百日目、そして一歳、二歳の誕生日に布老虎が作られ、ベッドの傍に置かれる。

布老虎は、主に赤、黄色のカラフルな綿布、絹などを使用して作られる。中には通常木クズやオガクズなどが詰められていることが多い。絵筆による彩色、刺繍、パッチワークなどによって、表情が加えられる。からだに対して大きな頭、目、口、耳、尻尾で勇ましさを強調しているが、ひょうきんな顔立ちがなんとも愛らしく魅力的である。民間工芸である布老虎には決まった規格や様式は存在しない。それぞれの女性が自身の美意識と観念に従って自由な発想で個性的な布製の虎を作っている。

工業の発達により大量生産が可能となった現代でも、手作りで丁寧に縫われた布老虎の愛着にはかなわない。中国女性の聡明さ器用さを体現するだけでなく、時間をかけて大切に縫い上げた布老虎には新しい時代を歩む子供達にかけた期待と祝福が溢れているからである。一針一針一目一目に、深い愛が込められた布老虎は、子供達のおもちゃとしてまた大人には懐かしい思い出の品として、老若男女から親しまれている。

近年、布老虎はそのユニークな面持ちとデザイン性の高さから、海外観光客や収集家からも熱い視線を集めている。

北京旅游网

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