澄泥硯

2012-08-09

筆、紙、墨、硯の「文房四宝」のひとつに数えられる硯は、陶器、金属、漆、磁で作られたものなどがある。石の硯が最も一般的であり石の種類も様々である。石の採取される地域には必ず石工があるといわれ、硯は中国各地で生産されている。中でも澄泥硯(日本語:ちょうでいけん)は、広東省の端渓硯、安徽省の歙硯、甘粛省の洮河硯と並び、中国四大名硯のひとつに数えられる。澄泥硯の生産は晋唐代に始まり、産地は、山西、河南、山東等の黄河流域地方である。発祥は山西か山東のどちらかだといわれている。

澄泥硯は、その名の通り澄んだ泥を焼成して作られた硯である。いく千年にもわたって黄河の川底に沈殿した泥を集め、更に絹で濾し、粉末のように“澄んだ”泥を原料とする。砂のような泥に黄丹団を加えて練り、成型、乾燥、そして彫刻等の装飾が施される。特殊な釜で長時間かけて焼き、磨きをかけて完成する。焼成する時間、温度、泥の調合によって、澄泥硯特有の様々な色、光沢、紋が形成される。

硯の形は、丸、楕円、半円、四角、長方形など、多様である。表面には山水や人物、動物が透かし彫りや浮き彫りで精巧に彫刻され、道具としてだけでなく、美しい工芸品としての価値もあった。毎日手元に置いて使用し目に入る硯は、美術品として書道家を楽しませ、書斎に華をそえていたのである。

文房四宝のうち、最も消耗しにくい硯は、貴重な骨董品として今も古代のものが残っている。唐宗時代のものは数少ないが、清代のものは市場に出回り、「古硯」と呼ばれて高値で取引されている。

澄泥硯はやわらかく、なめらかに墨がすれ、おろした墨はきめ細かく発色が良く、扱いやすい。澄泥硯の中にたまる墨は、夏に乾きにくく、冬に凍らず、腐りにくい。また表面は非常に滑らかで筆先を傷めない。

澄泥硯は多くの皇帝に貢物として献上された。澄泥硯は文化人にことのほか珍重され、憧れの的となった。しかし、清代(1644-1912)に入り、書道芸術が衰えた事から、澄泥硯もしだいに姿を消していった。

今日、澄泥硯は実用な文房具としてではなく、芸術的価値の高い工芸品として注目されている。しかし今日、伝統の制作方法で作られた澄泥硯は非常に入手困難である。材料が手に入らない事、硯を作る伝統技術をもつ職人がほとんど残っていない為である。現在、書道店で売られている澄泥硯はほぼ自然石から作ったもので、色、風合いとも本物と非常に良く似ているので澄泥硯と呼ばれている。

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