中国が誇る最も優れた伝統工芸の一つに琺瑯(ほうろう)がある。日本では、琺瑯引き、七宝焼きの名でも知られる。中国情緒あふれる美しい焼物の景泰藍(けいたいらん)は、北京の特産品として知られ世界中の観光客や収集家から注目を集めている。景泰藍は中国伝統絵画、彫刻、瑠璃工芸などその他の伝統工芸の影響を大きくうけて発展した。
琺瑯の基本的な技術は、元時代(1271-1368)に中東アジアから中国に伝わったと言われる。七宝焼きやほうろうは、明時代、特に宣徳帝の頃(1426-1436)に流行したが、当時は宮廷で使用されるのみで一般の人々の手に渡ることはなかった。宮廷は様々な七宝焼きの品々で埋め尽くされていたという。景泰帝(1450-1457)の頃に北京琺瑯は成熟期に入り、特に青色の彩色上薬が新しく開発されて、職人達はトルコ石のような青の琺瑯を作るようになった。この青色琺瑯器は、皇帝に奨励されてこの時期に盛んに生産された為、「景泰藍」と呼ばれるようになった。現代においての景泰藍は各色のものが揃っているが、依然として琺瑯は景泰藍の名が使われている。清代(1644-1912)までその流行は続き、宮廷の実用品、装飾品として欠かせない存在となった。既存の中国最古の琺瑯は、北京故宮博物館に貯蔵されている元代末期の酒つぼである。

景泰藍は北京を代表する工芸品として、花瓶、碗、皿などの伝統的な商品の他、土産物やアクセサリーなどの装飾品として多くの品物に使われている。
500年以上の歴史を持つ景泰藍の制作工程は複雑で大変根気のいる作業である。土台となるのは、主に銅や青銅である。そこに銅製の平たい針金で模様をかたどり焼きつけて固定した後、ガラス質の釉薬(うわぐすり)で彩色して焼成する。英語ではエナメルと言われるように、艶やかなツヤがある。金銀の線や焼成後に変色を起こす金属の混合物などが釉薬に加えられることもあった。
先ず金属で土台となる花瓶などの形をハンマーで打ち出す。文様を注意深く土台に転写する。針金をペンチで曲げて、図案通りに完成させる。針金は通常0.3mm~1mm程度の細さで、針金を貼り付ける作業は、出来上がりを左右する重要な過程である。それから、針金で区切られた部分に硝酸カリウム、ホウ酸、アルカリなどの混合物でできた釉薬を埋めていく。青銅から青、クロムから緑、ヨードから赤、亜鉛から白などそれぞれの顔料は、異なる鉱物を原料として作られる。すべての文様は小さなスプーン状の道具で釉薬をつめて彩色され、全ての模様を埋めた後に摂氏八百度で焼成する。高温になると釉薬が縮小する為、全ての模様が一定の高さになるまで焼いては彩色する事を繰り返す。次に水と金剛砂で平らに磨き、研磨用の石でツヤを出して仕上げる。最後に景泰藍の重要な工程、酸化防止と耐久性を上げる為の金メッキを施して完成する。
景泰藍の技法は、外来の琺瑯技術と中国の金属琺瑯技術が融合したものである。中国の歴史、文化、芸術の象徴として、古風、優雅、精巧、豪華な独特の風格をかもし出している。北京の琺瑯は首都を代表する工芸品として知られ、鮮やかな色合いで描かれた草花や人物は多くの人々を魅了している。元代、明代、清代に生産され、数々の国際的な賞を受賞したおおくの琺瑯作品は、故宮博物館で観覧することができる。



