湖筆

2012-08-22

湖州市は太湖のほとり、浙江省の最北に位置する。この地で生産される筆は湖筆と呼ばれ、その極めて優良な品質は古くからで国内外に知られ、良質な毛筆の代名詞となっている。

湖州の善璉鎮は、湖筆の発祥の地であり、主要な生産地である。「筆の都」として名高いこの小さな町では、代々にわたって筆を作る家がほとんどで、優れた湖筆の名門が数多く生まれている。

筆の起源は古く、新石器時代(4000-2500B.C)には、すでに筆の原形となる道具が使われていたという。世界で最古の筆は、湖北省の随州市で見つかった春秋時代(771-403B.C.)の毛筆である。しかし、現在のような筆の形となったのは、秦時代(221-2-7B.C.)だというのが定説だ。秦の将軍、蒙括が安徽省宣城で、丈夫で柔らかいウサギの毛と細くて丈夫な竹を使い、原始的な竹筆に改良を加えて毛筆を作ったといわれる。唐、宋時代には、筆生産の中心は宣城であり、宣城の筆は宣筆と呼ばれ、文化人や書画家から珍重された。

元代(1279-1368)初期、宣州の筆職人は戦乱を逃れて、湖州に移り住んだ。良質な水と、豊富な原料に恵まれ、すぐに湖州は宣州に変わって、最も良質な筆の産地として名を挙げることとなった。

湖筆の種類は非常に多い。材料により、軟毫、兼毫、硬毫の三つに大きく分かれ、更に細かく三百以上の品種に分かれる。軟毫には、墨吸いが良い山羊等の柔らかい毛が使われ、硬毫は主に馬の尾などの毛が使われ、兼毫は、柔らかい軟毛と剛い硬毛の2種類の原毛から作られる。毛の柔らかさ具合によって、力強く大胆な線や、流れるようにしなやかな筆使いが、自由自在に表現できる。軸部分には、伝統的に浙江西の山麓に自生する鶏毛竹が使用される。節が少なく、まっすぐな竹の空洞部は小さくて、筆軸に理想的である。また、象牙やヒスイ、漆器が軸の筆もある。

伝統的な湖筆の製作は非常に複雑で、浸皮、採毛、選毛、結び、装筆など、120以上の工程を経て完成する。熟練の職人が作る湖筆には「尖、斉、円、健」の四徳が揃うと言う。(尖)は、筆先が鋭く尖り、細くなった部分の毛が長く多いこと、(斉)は毛の先端が切ったように一直線で、毛並みが揃っていること、(円)は全体が丸みを帯び、筆腹が良く曲がり、毛割れが生じないこと、(健)は、穂に弾力があり、しなやかにも力強くも書け、長持ちすることである。

湖筆はまた湖穎とも呼ばれる。「穎」とは穂先の事である。日にかざすと透けて見えるほどの細く尖った筆先が理想とされ、穂先の長短は筆の良し悪しでもある。これは、上等な山羊毛をいくつもの工程で選別、加工し、丹精込めて仕上げてはじめて成るものである。唐代の詩人、白居易が「千万の毛から1本の毛を選ぶような仕事ぶり」「毛は軽くとも、功績は甚だ重い」と形容したが、それは決して誇張しすぎとは言えないほど、製筆の技術、生産方法は複雑かつ繊細だ。

古代から多くの湖筆が国外に輸出されてきた。大量の筆だけを載せた貿易船(筆船)は、上海や蘇州から、日本、韓国を含む、アジアに向けて出航し、湖筆の名は、中国国内に留まらず、世界各国に知れ渡るようになった。

湖州では、書道芸術の普及と保護の為に多くのプロジェクトが進行している。毎年行われる書道のイベントでは、国内だけでなく海外にむけて書道伝統の美しさと素晴らしさを発信している。また、2001年には、中国湖筆博物館が開館し、古代からの筆を展示、書道と筆の歴史と文化について学べるほか、実際に筆を作る過程も見学できる。

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