皮影戯(ピーインシ)

2012-08-02

中国の民間芸術である影絵芝居「皮影戯(ピーインシ)」で使われる「皮影」は、動物の皮「ロバ、牛、羊」で作った登場人物や動植物、大道具、小道具、背景などの総称である。記録によれば、皮影戯は2000年前の漢代には早くもその原型があったとされる。宋代になるとそれは完全に形成されて、芸術的にも大きな発展をとげた。以来こんにちまで、約千年の歴史をほこるのである。一時文化大革命のとき、思想教育により、かなりの物が、破棄された{「中国映画生きる」)が現在民間伝統工芸品として、復活しつつある。

動物の皮を裁断して整え、刻み、色をつけ、のし、組み立てをする―などの処理を経って、美しい皮影が完成するのである。原料である皮の吟味は重要で、硬く弾力性にとみ、均等の厚さで、透明性にすぐれたものが求められている。

刻み方には陰刻と陽刻の別があり、中国の民間芸術である切り紙の持ち味とよく似ている。しかし切り紙と違うのは、人形の手、ひじ、腰、足などの関節部分をそれぞれ分けて細工してから、つなぎ合わせて組み立てること。しばいをする時、人形を思いのままに動かすためである。

皮影戯を演じる際には、舞台に張られたスクリーンの裏手で、人形つかいが細い棒(ふつうは一体に三本)をつけた人形を操作する。人形は背後から強いライトを当てるため、色つきの影が鮮やかにスクリーンに映し出される。にぎやかなドラや太鼓に節が加わると、そこには「ひとくち語れば千年の故事、両手の舞いで百万の兵」という、興趣の尽きない戯曲芸術が生み出される。皮影は、演出の道具であるばかりでなく、すぐれた観賞価値と美的センスをもつ芸術作品なのである。

皮影戯の多くは、農民たちが農閑期に演じるものだ。そこでは、人形の制作者がよく人形つかいになっている。ストーリーや登場人物について熟知してこそ、人形づくりに心が込められるのである。彼らは必要に応じて、破損した人形を補修したり、取り替えたり、新しい演目に必要な人形をデザインしたり、細工したりしている。もちろん専門の職人たちもいて、その技術は師匠から弟子へと伝承されているが、しばいのストーリーや登場人物をよく理解することが必要である。千年あまりの歴史の中で、人形の造型も移り変わった。各地に異なる風格が生まれ、陝西、山西両省一帯に伝わる牛皮影、河北省唐山市ツミ県一帯の驢皮影などは、その代表とされている。

現在、中国でもこのような伝統工芸を継ぐ職人は少なく、古いものより新しい物のほうが高くなっている。古いものは研究材料には良いが、見るには耐え難い。

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