中国拳法—太極拳

2012-09-27

太極拳(たいきょくけん)は中国の長い歴史の中から生まれた中国拳法の一つ。円に沿った流れるようなゆったりとした動きが特徴であり、健康、長寿にもよいとされ、中国などでは朝の公園などで集まって練習している姿も見られる。拳法一般のイメージとは対照的にコントロールされたゆっくりとした動きを多く含む。

特徴

その特徴から実用的な武術ではなく健康体操と捉えられる場合が多いが、古い歴史と高い実用性、高度な技術を備えた立派な武術である。

中国の公園や広場で早朝に見られる太極拳は簡化二十四式太極拳と呼ばれ、複雑で難度の高い伝統的な太極拳を一般に広く普及させるために中国体育委員会が制定したものであり、健康法的側面が強い。

起源

伝説的起源

その昔、張三豊という人が少林寺で武術を修めた後に武当山に入って修行をし、道教の陰陽五行説の思想や吐納法という呼吸法を取り入れて編み出したものが太極拳であるとの説話がある。張三豊は中国の他の伝説にも現れる不老長寿の仙人の名前であり、武術との関連は明らかではなく伝説の域を出ない説である。

歴史的起源

元来は河南省の陳家溝という村で、明代から陳姓を持つ一族に伝えられていた伝統拳であったらしい。その頃には太極拳の名前はまだなく、単に陳家拳、綿拳などと呼ばれていた。明代末期から清代初期頃に、楊露禅は陳家に伝わるこの拳法を会得して独自の工夫を凝らし、北京に持ち帰り広めた。北京では他の武術家と競って破れたことが無く、楊無敵の異名をとるほどであった。北京の宮廷の貴族が競ってこの武術を習いたがり、露禅は一般の人にも練習しやすいように力を発する動作を省略または内に秘め、柔軟な動作を主体としてそれでいて武術としての本質を失わぬように改良した武術を教え広めた。後にこの楊露禅を祖とする武術が世界中に広まり、楊式太極拳と呼ばれるようになった。

種類

伝統太極拳

陳式太極拳

太極拳の源流であり、今でも陳家溝で伝承されている。太極拳の特徴である柔軟さや円の動きと同時に豪快な発力も備えており、外見的には激しい突きや強い震脚(強く脚を踏みならす動作)が特徴。一般的に持たれている太極拳のイメージからすると非常に剛の印象があるが、実際には剛柔を兼ね備え高度な理論と技術を持つ武術である。楊露禅の伝えた武術が太極拳と呼ばれるようになって以降に、陳式太極拳と呼ばれるようになった。

楊式太極拳

楊露禅が陳家溝で学び独自の工夫を凝らした柔軟な動きを主体とする武術で、現在の一般的な太極拳のイメージに近い。世界で最も多く学ばれている太極拳である。

呉式太極拳

楊露禅の弟子、呉鑑泉が創った新しい体系の太極拳。他の太極拳が立身中正(身体を垂直に保つ)を重視するのに対して前傾姿勢が多いのが特徴。

武式太極拳

楊露禅の弟子であった武禹襄が後に陳家溝で陳式太極拳を学び、統合して独自に編み出したものが武式太極拳である。本家である陳家溝で学んだことから陳式の系統に入れられることが多いが、技法的には楊式太極拳と類似している。‘かく’(赤+おおざと)為眞が広めたことから‘かく’式太極拳とも呼ばれる。

孫式太極拳

形意拳、八卦掌を学んだ孫祿堂が、晩年に武式太極拳の‘かく’為眞に太極拳を学び、統合的な武術として孫式太極拳を編み出した。孫式の太極拳、八卦掌、形意拳を総合した武術を孫家拳とも呼ぶ。

制定太極拳

簡化二十四式太極拳

難度の高い太極拳を広く一般に普及させるために中国体育運動委員会が著名な武術家達に命じて、楊式太極拳をベースにし重複動作の削除、難度の高い動作の簡略化を経て二十四の主要で簡単な動作にまとめたもの。伝統的な太極拳家の間では、単純化しすぎて本質を伝えにくいなどの不評もあるが、覚えやすく入門用の套路としては最適であり、全世界で練習されて健康増進の為には大きく貢献している。

一般に中国の公園で早朝に行われていたり、日本の太極拳教室で健康のために教えているものはほとんどの場合、この簡化二十四式太極拳である。

四十八式太極拳

同じく中国体育運動委員会の指導によって編纂された者であり、簡化二十四式を習得したものが更に発展した動作を学べるように創られた。やはり楊式太極拳を基礎としている。

総合太極拳

五大伝統太極拳の動作を組み合わせて創られた総合套路であり、多種多様な太極拳の動作が含まれているが、もともと風格の異なる伝統太極拳をつなぎ合わせたので連続性が悪くぎごちないところがあるとの批判もあるが、五大門派の特徴を余さず演ずることが出来るために国内外の競技会で正式種目として採用されている。

太極剣

伝統太極拳にはそれぞれの門派において剣、刀、棍などの兵器を用いる練習を行っているが、制定太極拳を行う者が太極拳の兵器入門として行えるよう、楊式太極剣を元に編纂されたものが三十二式太極剣である。さらに三十二式よりも高度な技法を含む制定太極剣として、四十二式太極剣がある。剣を練習することによって太極拳をより深く理解することが出来る。例えば剣の先まで力を伝える練習をすることで、太極拳の正しい動作に乗っ取って足下から手先まで力を伝えるための有効な練習となる。剣は手の延長であるとの言い方もある。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』

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