北京貢院

2012-10-19

建国門外の地下鉄の出口の一つに社会科学院という建物がある。社会科学院とは現在中国における社会科学分野、経済は勿論哲学や文学を含む最高のシンクタンクであり、3000人以上の人材を抱える中国の頭脳と言える。10階を越える立派な建物が広がる。

社会科学院に所属する研究者に何人か知人がいるが、その全てが明らかに優秀な人々であり、日本語の出来る人材も豊富である。『日本のバブル経済とその幻影』などと題した過熱する中国経済への警鐘を鳴らしている人もいる。多才である。

その建物の両側の道が貢院東街と西街とある。貢院、それは隋の時代から1905年まで続いた中国の公務員登用制度である科挙の都での試験場なのであった。社会科学院はその歴史を受け継ぐべく跡地に建てられたと言うわけなのである。

科挙は先ず地方で『県試』『府試』『院試』の3段階の試験を潜り抜け、そして役人の末席である生員となる。その後3年に一度各省の省府で行われる『郷試』に合格して初めて首都北京に上り、『順天会試』をここ貢院で受験するのである。気の遠くなる道のりであり、またここにやってきた人々が如何に秀才であったかは想像を絶するものがある。

科挙は王朝が変わっても継続された独特の制度である。どうしても王朝、支配者一族の専横が起こりがちな中国で、閨閥に縛られず優秀な人材を登用し、国を治めていくという実務的な、そして合理的な制度と言える。

今はこの貢院の通りにその名残は見つからない。僅かに胡同が点在し、老人たちが中国将棋に興じている姿が見られるのみ。

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