大河小説からの映画『白鹿原』

2012-11-16

今回紹介する映画は『トゥヤーの結婚』(2006年/ベルリン国際映画祭金熊賞)のワン・チュアンアン監督が陳忠実の同名小説を映画化した『白鹿原』である。これまでにも何度か映画化に向けた動きがあったようであるが、制作にはいたらず、同監督が苦労の末にようやく完成させた。

物語は、中国西北部の白鹿原村を舞台に3世代にわたる人々を描いた大河小説のうち、1911年から38年までの時期をクローズアップしている。まず、鹿子霖(ウー・ガン)が辮髪を切り村に革命を知らせるところから始まり、彼と族長の白嘉軒(チャン・フォンイー)、素朴で義を重んじる農民・鹿三(リウ・ウェイ)という3人の世代と、その息子たちの世代間の出来事が展開されていきる。家族、伝統、因習などという価値観で成り立っていた村社会が、新たな時代の中で革命、国民党、共産党、軍閥、そして日本軍などといった大波を受けるのである。一方、そうした時代の変化とともに、田小娥(キティ・チャン)という女性個人によっても伝統の価値観が試されていく様子が並行して描かれる。

中国国内での上映版は156分で、ベルリン国際映画祭に出品された188分版(ほかに220分のディレクターズ・カットもあるとか)からかなりカットされたようであるが不自然な点は少なく、よくまとまっていたと思う。

観客の反応に教えられるあれこれ

ところで、私がこのコラムで中国の映画館で鑑賞することをお勧めするのは、中国の観客は比較的ダイレクトに感情を声に出すこともあり、映画館で見ると現地の人たちの感じ方がわかるからである。この日も、冒頭で主演俳優の名前が1人ずつ表示されるといちいち音読する人がいた。それも感情がこもっていて気持ちまでよく伝わる。「……張豊毅(大スターだよね)、張雨綺(知ってるよ、きれいな女優さんだよね)、呉剛(おお、彼も出ているのか)、成泰燊(……)」という具合である。ちなみに、彼の名誉のために付け加えておくと、チェン・タイシェン(成泰燊)は文芸映画を中心に活躍する俳優で、中国では玄人好み的存在である。主演作の『世界』、『我らが愛にゆれる時』が日本で公開されていますから、むしろ日本の中国映画ファンの方がよくご存じかもしれない。

また、物語の村を含む陝西省の関中地方は小麦の産地で、独特の麺食文化を持っている。作品中にも麺を食べるシーンが何度も出てきたが、中でも生のニンニクをかじりながら汁の少ない麺をかき込む場面では、観客席が大いに盛り上がった。私から見ると北京の人もかなり麺食だと思うのであるが、彼らにもこの食べ方は珍しかったようである。陝西省出身の同僚に聞いてみたところ、関中地方では今でもこうした食べ方をするということである。

【データ】

白鹿原White Deer Plain

監督:ワン・チュアンアン(王全安)

キャスト:チャン・フォンイー(張豊毅)、キティ・チャン(張雨綺)、ドゥアン・イーホン(段奕宏)、ウー・ガン(呉剛)、リウ・ウェイ(劉威)、チェン・タイシェン(成泰燊)、グォ・タオ(郭濤)

時間・ジャンル:156分/ドラマ・歴史

公開日:2012年9月15日

UME国際影城(安貞店)

所在地:北京市東城区北三環東路36号環球貿易中心E座

電話:010-58257733

アクセス: 地下鉄5号線和平西橋駅A出口から東へ徒歩10分

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