新彊英吉沙県で生産される英吉沙小刀は、400年以上の歴史がある。新彊の少数民族であるウイグル族は古くから刀を作る技術を発達させ、英吉沙小刀は、狩りなど生活にかかせない実用品であった。英吉沙小刀は、ウイグルナイフの名でも知られ、ユニークな造型と精巧な装飾から国内外の収集家や観光客の人気を集めている。

ウイグル族は九百万人の人口を持つ少数民族で、その多くはイスラム教を信仰し、新彊ウイグル自治区で生活する。アラビア文字を表音文字として使い、トルコ語に似たウイグル語を話す。
英吉沙小刀はウイグル民族の文化、歴史において極めて重要なものであり、伝統的な儀式や生活に欠かせない物であった。男の新生児が生まれると、枕の下に英吉沙小刀を置く習慣は古くから伝わるものである。刀は男性らしさの象徴であり、ウイグル族の男性は皆数本の刀を所有し、その内の少なくとも一本を常にベルトに携えている。
現在英吉沙小刀には、分かっているだけでも20種類以上の種類があり、40色以上のバリエーションがある。刀の柄は鳳の尾などの形に似せ、木材や、象牙、銅、ラクダの骨など様々な素材から作られる。通常、精巧な文様と金銀と多くの宝石で色とりどりに装飾されている。刃は主に純銀で、この部分もまた複雑な模様が刻まれている事が多い。ナイフは、ウイグル族の伝説、伝統を象徴する柄で飾られた牛革、羊革のケースに収められている。
400年の歴史を経て、英吉沙小刀は新彊ウイグル族を代表する民族工芸品となった。現在も新彊地区では、刀を扱う多くの店があり、多くの観光客がシルクロードの記念品としてウイグルナイフを買い求めにやってくる。ウイグル族の文化と歴史に深く結びついた英吉沙小刀は、中国が誇る伝統工芸品の一つである。



