1月下旬、中国各地は一年で最も寒い時期を迎えた。中国北方地方では雪が舞い散る天候が続いているが、長江以南の南方地方では残雪の中に咲く梅の花が、一足早く春の訪れを告げている。
中国では冬の厳しい寒さの中でも、松や竹は常緑を保ち、また梅は寒さの中で、百花に先がけて花を咲かせることから、松・竹・梅を寒い冬の三つの友という意味の「歳寒三友(さいかんさんゆう)」といい、それは日本にも伝えられた。
さて、今回は「歳寒三友」をテーマにし、3回に分けてそれぞれ梅の花、竹、松に関連のある音楽をご紹介。今回はまず、梅の花をテーマに中国各地の梅の花を讃える音楽「梅花三弄(梅の花の三つの味わい)」、「紅梅賛(梅の賛歌)」「一翦梅(一輪の梅の花)」「踏雪寻梅(雪を踏み梅の花を探す」を紹介する。
梅は中国四川省近辺の高地が原産で、3000年前から長江以南の地区で広く植えられ、その後、朝鮮半島と日本に伝えられ、東北アジア諸国の人々に愛される花となった。今では、梅はアジアの人々に愛されるだけでなく、オーストラリアやニュージーランドなどでも栽培され、その清らかな香りは「冬のハート」と讃えられている。
中国では梅は古くから多くの文人に愛され、梅の花を讃える歌や詩も非常に多い。文人たちはその清雅な佇まいと馥郁たる香りを讃えるだけでなく、寒中に凛と咲く梅の気高さを君子に例えた。中国の諺に「梅の花の香りは厳しい寒さから生まれるものだ」という言葉がある。この詩句は、「人間も苦しい経験を積むことで 素晴らしい人生になる」ことの例えでもあり、現在でも励ましの言葉として人々に愛用されている。
1曲目梅花三弄(梅の花の三つの味わい)
この曲は中国の十大古曲の一つで、梅の花の高貴な香りと優雅な姿を現した主旋律が、3つの異なる奏法で表現される。今から1600年前の晋の時代に笛の曲として生まれ、その後、古筝の曲も出てきた。近年古筝独奏用に編曲され、古筝の代表的な作品となった。
2曲目紅梅賛(紅梅の賛歌)
この曲はもともとオペラ「江姐」の主題歌である。「江姐」は女性革命家で、彼女は投獄されても断固として戦い、革命の理想に献身した。歌は江姐を寒さを畏れず開花する梅に例え、彼女の屈服しない気骨と凛とした品格を表現している。オペラ「江姐」は1964年に上演され、当時一大センセーションを巻き起こした。その主題歌も中国全土で大ヒットし、半世紀を経た今でも多くの人々に愛唱されている。
歌詞は
梅の花が岩の隙間に咲き、
千里の雪原に根を深く下ろす。
どんな寒さも畏れず、
太陽に向かい開花する。
芳しい香りが遠く漂い
百花が一斉に開くように呼びかける
3曲目一翦梅(一輪の梅の花)
この曲は台湾の男性歌手・费玉清さんが歌ったものである。
费玉清さんは台湾の実力歌手で、1980年代に民謡歌手としてデビューした。彼は外見の良さと情感的な歌声で人気を博し、アイドル歌手として長年台湾ポップス界の第一線で活躍し続けている。彼の歌声は、若者の世代にも人気がある。
「一翦梅(一輪の梅の花)」という歌は1984年に放送されたテレビドラマのテーマ曲で、不変の愛を讃えている。
歌詞は
真心は梅の花のように
雪に覆われることはない
寒い梢に凛として咲き
春の訪れを告げる
4曲目踏雪寻梅(雪の中で梅の花を探す)
この曲は「夜猫子(ふくろう)」という四人組の女性バンドが歌ったもので、晴れた日に子供たちが雪の中で梅の花を楽しむ場面を描いている。