什刹海 夜の池に輝くネオン街

2013-06-17

什刹海の夜は、1日の中でもすばらしい時間帯だ。両岸に並ぶレストランの赤灯籠に明かりがともり、四方から客を招きよせる。什刹海の三つの池の中でも、前海と後海の変化は激しく、西海はさほどでもない。前海一帯はかつて骨董の専門商店街で、夜に訪れる人は少なかった。しかし、今や夜でもこうこうと明かりのともる場所となった。さまざまな特長あるバーが多くの客を招きよせ、オープンテラスのイスですら一杯である。

前海の西南角に極彩色の牌楼(鳥居型の門)が建っており、そこには「荷花市場」の四文字が記されている。荷花市場の名前の由来は、古くまでさかのぼる。昔、この辺りの水面にはハスが広く自生しており、夏にはその花が満開となった。大きな緑葉に薄紅色の花が引き立ち、それはまるで詩句の「映日荷花別様紅」(日に映えるハスの花は、その赤さが際立つ)のようだった。また、かつてはここもにぎやかな商店街だったので、荷花市場と呼ばれたのである。

牌楼のそばには、アメリカ資本のコーヒーショップ「星巴克」(スターバックス)がある。「緑色はスターバックスの代表だ」と多くの人が思うだろう。しかし、この支店は赤を使って外観を飾っている。形式にこだわらず、池の風景とマッチさせることに重きがおかれたのであろう。

前海にあるバーやレストランは、そのほとんどが大きくて立派な構えだ。「橋水人家」「潮竜閣」「望海怡然」「柳塘庭」などの店がある。その中に、「茶馬古道」というレストラン・バーがある。茶馬古道は中国・雲南の西からミャンマーなどの国へ行く、かつての交通の要路であった。その昔、中国のシルクや茶などの特産物は、この道を通って東南アジアへ売られていった。そのため、茶馬古道は別名「西南シルクロード」とも呼ばれた。この名前を見ると、つい引き寄せられてしまうのである。

店内に入ると、すぐに大きな滝が目に入る。それは二階の階段からゆっくりと流れ落ちている。ザーザーという水の音と、壁に飾られた雲南の風景写真は、まるで訪れた人を大自然に導くかのようだ。ここでは、雲南名物の焼肉やプーアル茶を味わうことができる。従業員はいずれも雲南から来ている人たちなので、興味があればふるさとの風情について説明してもらうこともできる。

彼らによれば、このレストラン・バーは中国の有名なモダンアーティスト・方力鈞が設計し、オーナーになったものだという。なるほど独特な雰囲気を持った店だ。

前海のほとりには、2、30艘の大小さまざまな木造船が接岸されている。大きな船には十数人、小さな船には3、4人が乗ることができる。船はいずれも中国の南方から運ばれたもので、それぞれに20代の若者が一人ずつ乗り、巧みなまでに漕いでいる。この船に乗れば什刹海がひとめぐりできる。

船に揺られる水面には、両岸のバーやレストランに輝くネオンが赤、黄、青と映えている。木造船の赤い灯籠が一つひとつ、水面に明るく輝いている。もし希望があれば、若い女性奏者に船上で琵琶を演奏してもらえる。船を浮かべて茶を味わったり、音楽を聴いたり……。それは人々に江南の水郷を彷彿とさせる。

船を走らせて銀錠橋を過ぎると、後海につく。前海の明るさ、豪華さに比べると、後海は素朴な落ち着きがある。銀錠橋のたもとにそびえるレストランの前には、自動車が一杯に駐車されている。百年近くの歴史をほこる北京の老舗「烤肉季」だ。聞くところによると、烤肉季は早くも清代にその名を馳せた。当時の食べ方は、じつに豪快であった――。大きな炉に炭を焼き、それを囲んでそばに立つ。両手にそれぞれタレ入りの茶碗と長い箸をもって、片方の足を長イスに乗せて態勢をととのえる。そして新鮮な牛肉や羊肉をタレにつけ、炉の上の巨大な鉄板で焼いて食べるのである。肉を食べながら、酒をあおぐ。汗をダラダラ流しながら、「好!」(うまい、最高だ!)という喝采を叫ぶのである。こうした豪快な食べ方は遊牧民族の間で生まれ、清代に北京に移住した満州族とともにもたらされた。今ではこうした食べ方が廃れてしまったが、烤肉季は什刹海の辺りでは最も有名な老舗となった。

有名な講談芸人・連麗如さんが開いた「月明楼書場」では、火曜を除いて毎晩『東漢演義』『三国演義』などの伝統的な長編講談を行っている。小さな会場はいつも満席に

後海そばの羊房胡同11号には、宮廷料理で有名な「厉家菜」というレストランがある。数年前には東京・六本木にも支店がオープンして、大きな話題を呼んでいる。

講談は、北京人にもっとも好まれる伝統文芸の一つである。茶を飲みながら講談を聞くのは、老北京人ならではの憩い方だ。後海のほとりにあるレストラン「月明楼」では、中国の講談芸術名人・連麗如さんが毎週ここで講談を披露している。また、ここの調理師たちは真の伝統的な北京料理を作ることができる。それも客の楽しみの一つになっている。「人民中国」

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