ここでは日本人の常識と中国人の常識の大きな違いについてすこし言及してみましょう。そうした違いについて少しでも知っておけば、実際に直面した時に戸惑いを避けられますし、相手のすること、言うことが日本人から見ればおかしかったり、礼儀を失しているように見えたとしても、実際のところ、彼らからしてみればそうではない、ということがわかります。
その一つとして感謝の表し方があります。例えば、日本人は相手がしてくれた一つの行為に対して重ね重ね感謝を表します。例えば、友人が食事に招いてくれたとしましょう。招いてくれたそのときに感謝を表し、実際に友人宅に着いた時、そこを離れる時、さらには次の日あるいはそれから数日、さらに念押しで感謝を表します。日本人はそうやって相手と、付かず離れずの微妙な距離の上に良好な関係を保とうとするのです。
しかし、中国人の感謝の表し方はそうではありません。また、中国人は一旦相手を信頼し、友とみなしたら、家族同様の関係になります。わたしたちが上に挙げたような日本式の方法で感謝を表そうとすると「不客気(ブーカーチ)!」とか「別客気(ビエカーチ)!」と言われます。これらは「他人行儀はよしてくれ!」という意味です。つまり、一旦、家族のような関係になったのに、繰り返し感謝を表されると他人同士みたいだ、というわけです。「親しき中にも礼儀あり」という日本文化とは大きな違いですね。
では、中国人には感謝を表さなくて良いのか、というともちろん、そういうわけではありません。彼らが家族関係に求めること、それは困ったときに実際の行動で助けあうことです。それはお金やモノを送ったりすることも含まれます。実際にどういう仕方、行動で相手に対する感謝を表すかは、実は日本以上に「空気を読む」ことが求められます。日本人の多くは中国人は自分のペースで物事を行い、雰囲気を読んだりすることなんてしないと考えていますが、それは大きな間違いなのです。
といっても、わたしは個人的には日本式の感謝の表し方も素晴らしいと思います。「郷に入れば郷に従」いながらも、日本の良さを中国人にわかってもらうのが一番ですよね。
china-enhancementより