世界遺産登録で文化保護の新たなスタートラインに

2015-07-08

湖北恩施唐崖土司城遺跡

ドイツのボンでこのほど開催されたユネスコ(国際連合教育科学文化機関)第39回世界遺産大会において、中国に対して満場の拍手が送られ、はるか遠くに離れた中国の人々に、この上ない喜びがもたらされた。世界遺産委員会メンバーの満場一致により、湖南永順老司城遺跡、湖北恩施唐崖土司城遺跡、貴州遵義海竜屯土司遺跡が、「世界遺産リスト」に登録されることが決定したのだ。これにより、中国の世界遺産は計48カ所に達し、その数は世界第2位となった。人民日報が伝えた。

中国人の印象としては、世界遺産に登録されたことは、それほどのビッグニュースではないかもしれない。だが、西南部の山岳地帯で生活するトゥチャ族・ミャオ族・コーラオ族の人々にとっては、「土司遺跡」が世界遺産リストに入ったことは、未曽有の文化的大事件であったに違いない。同時に、千百年もの間連綿と続いてきた、「政治を整えて教えを修める、社会風俗にもとづき統治する」という管理コンセプトが凝縮された土司制度・土司文化も、世界に向けて神秘のベールを開くこととなった。「互いに良いことをして公共のために働く」―世界遺産となったことは、大きな中国大陸において、より広大な地域とより多くの民族に対して新たな理解が生まれたことを意味する。文化を伝承し、遺産を護る中国の努力が、今再び世界から認められた。

中国は、1985年に「世界文化・遺産保護公約」に加入後、30年という「世界遺産申請の道」を歩んできた。現在、中国には、世界遺産約50カ所のほか、国家歴史文化名城125カ所、歴史文化名鎮252カ所、歴史文化名村276カ所がある。

貴州遵義海竜屯土司遺跡

「世界文化・遺産保護公約」第4条では、「文化及び自然遺産の認定、保護、保存、展示、次世代への伝承は、各国に課された責任である」と明確に示されている。この意味では、「世界遺産」という称号には、より多くの責任がともなう。登録決定は決してゴールではなく、保護責任を履行する新たなスタートラインなのだ。

今回、世界遺産への登録が決まった土司遺跡は、非常に脆弱であり、保護は簡単ではない。だが、幸いなことに、登録決定というニュースが伝わると、各地は喜びと同時に、保護責任に対する新たな自覚と責任の重みについて表明した。永順老司城では、現地県委員会書記による第一声は、村の規約を制定し、遺跡エリアに対する24時間パトロールを実施するといった、「保護体系のさらなる改善」だった。遵義海竜屯では、現地政府が、関所や城壁など遺跡の修繕保護計画を策定中で、文化財の安全評価のために専門家を招いた。

文化が伝承される過程で、保護と開発は、永久不変の課題である。文化遺産は複製してはならず、再生もできない。世界遺産に決定する、しないにかかわらず、保護は最優先事項に据えられるべきだ。しっかりと保護することで初めて、文化遺産の持続可能な利用が実現し、今生きる人々や子子孫孫に幸せがもたらされる。

ある80歳代の在米中国人は、「小さい時に故郷を離れた自分にとって、故郷の記憶はかすかなものでしかない。ただ一つ、故郷にあった小さい廟のことは、今でもよく覚えている。出発前に、廟の中で額をつき、立ち去る時には何度も振り返った」と感慨深そうに話した。「山を仰ぎ 川を眺め 故郷を偲ぶ」ことは、本質的に、文化に対する憂いと憧れであり、社会全体が共に対峙すべき課題である。ドイツ・ボンで開かれた世界遺産大会において、「遺産の危機に対して世界が協力して行動しよう」という「ボン宣言」が採択された。今年の中国の文化遺産デーは「保護の成果を国民全体で共有する」をテーマにしている。本質的なものを忘れずにいることで、初めて未来が切り開かれる。一人ひとりが共に行動に移し、「ここに来た記念に」などという身勝手な落書きは一切控え、文化財を敬う自覚を持ち、人類共有の文化遺産を護る気持ちを持ち続けることで、遺産の美しさや素晴らしさが、輝き続けることができる。

「人民網日本語版」

北京旅游网

モデルコース
人気おすすめ