数ヶ月間にわたって繰り広げられてきた中日両国によるインドネシア高速鉄道の受注合戦が、8月末に終幕を迎える。どちらが受注を獲得するかはまだ分からない。インドネシアは、どちらかの「恨みを買う」ことのないよう、第三者機構を招いて最終評価を行っている。ここからも、中日双方の提出した計画にそれぞれメリットがあり、どちらも捨てがたいということが伺える。意外なことに、というよりも、よく考えれば当然のことだが、この争いの中で一番利益を得るのは、インドネシアなのだ。国際商報が伝えた。
▽それぞれに長所
インドネシアの首都ジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道計画を巡る中日両国の受注合戦は、最後の肝心な時期を迎えた。インドネシア政府は今月中にもどちらに発注するかを決定するとしている。
インドネシアのジョコ大統領は22日、第三者の世界的なコンサルティング会社・米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)を招き、中日双方の事業化調査の結果に対して10日間にわたる評価を行った上で結果を出すことを明らかにした。評価の重点は、建設費、科学技術ソリューション、施設の構造、インドネシアの原材料の使用比率など。中国鉄道チーフエンジニアの何華武氏(中国工程院院士)は、「中国側が制定した高速鉄道建設計画では、インドネシアの材料を使用する割合が高く、60%に達する」と指摘している。
中国現代国際関係学院・東南アジア問題専門家の駱永昆氏は取材に対し、次のように語った。
現在、中日両国が提出している最新計画の内容は似通っており、優劣をつけがたい。日本側の計画には駅など関連インフラの建設、操作者・サービススタッフの育成などが含まれていたが、中国が提出した最新計画にもこれらの内容が含まれている。
ただし、双方には違いもある。日本はかなり早くからジャカルタ-バンドン高速鉄道の建設に強い興味を示しており、インドネシアにも何度もフィージビリティスタディと関連計画を提出してきた。日本は特に2008年前後、インドネシア政府と何度も交渉を重ねていたが、インドネシア政局の変動などにより立ち消えとなってしまった。また、日本側は4500億円程度(約37ドル)を年利0.1%で融資する条件を提示しているが、これは中国側の条件(55億ドルを年利2%で融資)よりも優れている。さらに日本側は高速鉄道の耐震性をアピールしている。
一方、中国側にも有利な要素が2つある。まず、インドネシアのジョコ大統領が3月初めに訪中した際、両国は「ジャカルタ―バンドン高速鉄道建設協力に向けた覚書」に調印、中国発展改革委員会の徐紹史委員長が8月初旬にインドネシアを訪問した際には「ジャカルタ―バンドン高速鉄道計画の実施に関する協力枠組み」に調印した。これらは国家レベルの協力枠組み協定だ。
次に、中国は完成時期を2018年竣工予定としているが、日本は2023年竣工と、中国よりも5年遅い。この点から見れば、中国のほうが建設費を節約していると言える。日本側の価格的な優位に対しては、中国も計画の調整を行い、競争力のある政策を打ち出している。
南開大学日本研究院の劉雲客員研究員は、「中日双方にそれぞれ強みがある。日本はインドネシアなど東南アジア諸国で長期にわたりインフラ・鉄道プロジェクトを担当してきた。その技術、プロジェクト施工、前後期の流れなどは比較的完備されている。英国や東南アジアなどの鉄道プロジェクトでは、これまで日本が受注を獲得するケースが多かった。しかし中国にも後発の強みがある。鉄道製造大国の中国は、コスト面で優位性を持つ」と指摘する。
実のところ、中日両国は計画を何度も改善するなど、どちらも十分な誠意を見せており、ジョコ大統領はどちらを選ぶべきかのジレンマに陥っている。駱永昆氏は「インドネシアが第三者機関を顧問として招き、評価を行ったのも、このことが原因だろう。つまり、直接どちらかの『恨みを買う』のを避けるためだ。第三者機関はフランスとドイツの専門家からなり、公正な結果が示される」と指摘した。
▽どちらに転ぼうと、最大の勝者はインドネシア
インドネシア政府は、今月中に発注先を決めるとしているが、駱永昆氏は「インドネシア政府のこれまでのやり方から見て、結果は8月30日前後に発表されるだろう。9月初めに持ち越される可能性もある」としている。
劉雲氏は「中日共に強みがあり、どちらが受注を勝ち取るかは、インドネシア政府の政治的な考えが多く反映される」と語る。
駱永昆氏は「第三者機関の結果で最終的な選択を決めるというのはやや『安易なやり方』だが、どちらが落選しようと、インドネシアは今後の投資、貿易、もう1本の鉄道建設などで埋め合わせをするだろう。実は、日本はジャカルタ-バンドンの高速鉄道だけでなく、ジャカルタ-スラバヤの鉄道プロジェクトにも目をつけている。もし今回中国が受注を勝ち取れば、日本がもう1つのプロジェクトを勝ち取る可能性が非常に高い。タイの高速鉄道プロジェクトもそうで、受注を勝ち取ったのは日本だったが、中国はその後、タイの他のプロジェクトを受注している。当然、中日のどちらを選ぼうと最大の勝者はインドネシアだ。中日の受注合戦はメディアの誇張による部分も大きいが、インドネシア政府にも意図的なところがある。なにしろ、アジア1位と2位の経済体がインドネシアの高速鉄道計画を奪い合っているのだ。これは、インドネシアの投資環境、投資可能性の良さを十分に物語っており、インドネシアのプラスのイメージ樹立につながる。インドネシアが世界に向けて『世界の海洋の枢軸』戦略をアピールする絶好の機会ともなる。インフラ整備は同国の『海上高速道路』計画の核心であり、世界からの注目度も高まっている」と述べた。
人民網日本語版