▽袂を分かった日清と今麦郎
インスタントラーメン市場での10年に及ぶ奮闘の時期を経て、日本の日清食品グループはこのほど中国での合弁事業から撤退することを明らかにした。これは、日清と中国ラーメンメーカーの今麦郎との10年にわたる協力関係の終わりを意味する。日清は今後、香港や上海などでうち立てた基礎の上で事業を展開し、インスタントラーメンの高級化戦争に独自に乗り出す構えだ。「北京商報」が伝えた。
日本メディアが伝えたところによると、日清は今月26日に中国でのインスタントラーメン合弁事業から撤退し、合弁会社の株式を約86億円で協力パートナーに売却することを明らかにした。日清は協力を終えることについて、「今後は日清の強みがある香港や上海などの大都市を中心に、独自の販売網を利用した市場シェア拡大に専念するため」としている。
日清がこのたび売却するのは今麦郎と共同出資して香港で設立したインスタントラーメンの製造・販売会社など3社で、保有する全株式を今麦郎に売却して、資本提携関係を解消する予定だ。日清の3社に対する出資比率は約14〜15%。
日清と今麦郎との協力は2004年にスタートし、日清は当時、今麦郎に5億4390万元(1元は約19.2円)を投入し、その後は多角的な投資を進めた。12年になると、日清の持ち株比率は33.4%に上昇し、今麦郎は社名を「今麦郎日清食品有限公司」とした。
今麦郎は日清の撤退についてメディアの取材に答える中で、「双方ともそれぞれ独自にブランド発展事業を推進することに同意しており、友好的な話し合いを経て、今麦郎は日清が保有する合弁会社の株式をすべて買い戻しする。10年に及ぶ協力関係を経て、日清と今麦郎は今後は別々の道を歩むことになった」と述べた。
▽単独で戦う
日清の公式サイトをみると、日清は今麦郎との合弁会社以外にも、1990年代に子会社を設立しており、成熟したインスタントラーメンブランドを抱えていることがわかる。広東順徳日清食品有限公司は94年、上海日清食品有限公司は95年に設立され、主に「カップヌードル」、「日清焼きそばU.F.O」、「炒面大王」、「出前一丁」などのブランド麺の製造を手がける。
日清のこのたびの撤退について、日清も今麦郎も友好的な話し合いの結果だとしているが、インスタントラーメン業界のウォッチャーは、「中国インスタントラーメン産業の変化にともない、両者の戦略に食い違いが生じたことが、双方の提携解消の根本的な原因とも考えられる」と話す。
匿名の業界関係者は、「インスタントラーメン産業の2大大手とされる統一と康師傅との低価格競争が終わり、国内インスタントラーメン産業は高利益、高級化の新たな発展段階に突入した。製品の構造と市場での配置をみると、日清の自社製品の位置づけは高級品で、一線都市での配置を中心に据えるが、今麦郎が見据えるのは二線都市と三線都市で、高級品市場には足を踏み入れようとしない。日清にとってみれば、インスタントラーメン産業の競争の激化を背景として、合弁会社から身をひき、高級化路線に専念することが、競争の有効な手段であることは間違いない」という。
同関係者は、「10年前の日清と今麦郎との協力は国内インスタントラーメン市場の発展の潜在力と今麦郎の投資価値を見越してのことだった。だが今、産業のトップ企業に押され、今麦郎は経営が苦しく、投資価値も減少傾向だ。この時期に独自路線を探ることは、日清にとって賢明な選択だといえる」と指摘する。
▽高級路線の戦いに参戦
市場を取材してわかることは、日清製品の提供ルートはコンビニエンスストアと高級スーパーに集中し、価格が高めだということだ。合味道シーフード味は5.9元、出前一丁大辛とんこつ味は5.9元で、統一の高級ブランドの湯達人や革麺よりは安く、康師傅の愛鮮大餐とほぼ同価格だ。
業界関係者によると、日清はこのたびの合弁事業撤退の発表に際して、「今後は香港や上海などの大都市市場を重点的に発展させる」としており、日清の明らかにした方針は高級化路線であることがわかる。この路線の上で、日清は康師傅や統一などの市場シェアが50%を超える成熟したライバルたちと戦わなければならず、農心や久久愛といった勢いのある後発組とも戦わなければならない。
だが日清は自信があるといい、2018年までに中国の直営営業ネットワークを13年の2倍に増やす計画を明らかにした。
前出の業界関係者は、「日清には相当な市場シェアがあり、香港ではカップ麺で約70%のシェアがあり、上海では10%だ。独自の事業開拓に専念するのにともない、市場シェアも上昇するとみられる。日清が直面する障害は、これまでに挙げた強いライバルたちだけでなく、インスタントラーメン市場全体の成長ペースの鈍化も発展の足かせになるだろう」との見方を示す。
「人民網日本語版」