北京には七千あまりの胡同(北京旧城内の路地)があるといわれている。それを一つ一つ巡るのはなかなか難しい。また、胡同巡りをしたくても、どこからスタートすればいいのか悩む人もいるかもしれない。独自の歴史と物語を持つ胡同だが、その中には特に行く価値があると言われている「十大胡同」が存在する。順番にこの十か所の胡同を紹介していこう。
▲その三:帽児胡同
帽児胡同は北京・東城区の西北部にある胡同で、南鑼鼓巷と地安門大街を繋いでいる。幅は7メートル、全長にして585メートルほどあり、両端は賑やかな大通りに連結しているから、いつも車や伝統の三輪車が行き交い、人が絶えることはない。
今はおしゃれなバーや雑貨店が多く出店しているが、昔の有名人の旧宅もここの見所の一つだ。帽児胡同37号は、映画「ラストエンペラー」で知られる清朝皇帝・溥儀の妻、婉容が結婚する前に住んでいた家。今はすっかり古くなったが、昔は大豪邸だったという。
帽児胡同6号は「達貝子府(中国語表記:达贝子府)」、达赉という貝子の故旧。貝子とは清の時代の王族の爵位の一種類で、親王、郡主、貝勒に続き四番目に位が高い。赤いドアはよく手入れがされており、光沢のある色は灰色の胡同の中ではとても目立つ。
また、「可園」という中国式庭園は今になってもきれいに保存されている。1861年に完成したこの庭園は、間取りや池、築山、石や草木の配置にこだわっており、四季それぞれに違った風景が楽しめる。
中国史の人物に詳しくなくても楽しめるお店もある。ここにやって来る日本人の多くは、日本料理屋の「鈴木食堂」という店を目当てにやってくる。店内は木製のインテリアでまとまっており、とても温かい雰囲気。さらに「インスタ映え」がいいということで、若い人には大人気だ。定番の南鑼鼓巷とも近いことで、ちょっと寄ってもあまり時間が掛からない。
<アクセス>
バス:13番・42番・60番・118番・612番・623番・701番バスで「地安門東駅」に下車。
<文・孫錚>