中国の四字熟語とその由来・「朝三暮四(ちょうさんぼし)」

2018-06-08

面白い故事がありますので、ご紹介します。

宋の国に猿が大好きなおじいさんがいました。おじいさんはたくさんの猿を飼っています。彼には猿の心がよくわかり、猿もまた彼の心がわかるといいます。おじいさんはそんなに裕福ではありませんので、家の者の食べる物をへらして、猿に食べさせていました。

ところが、ある時、おじいさんの家は更に貧乏になってしまいました。おじいさんは困って、猿の餌を減らすしか方法がなくなってしまいました。 せっかく自分に馴れている猿の機嫌をそこねてはまずいと思い、まず猿たちにこう言いました。

「お前たちにドングリをやるのに、これからは朝に三つ、暮に四つにしようと思うがどうだ?」

すると猿たちは皆怒り出しました。それを見て、おじいさんはこう言いなおしました。

「それじゃ、朝は四つ、暮に三つということにしよう。そうすればよかろう?」

猿たちは皆喜んで身体を伏せて、おじいちゃんの言うことを聞きました。

この寓話は『列子』の「黄帝篇」から来ています。もともとの意味は、利巧者が愚かなものを騙すことを暴露することにあります。ドングリの数は実は変わっていません。ただ、朝三、暮れ四から、朝四、暮れ三に変わってだけです。実際は一日食べる量は同じです。巧みな言い方に騙されないよう戒める言葉です。

目先の違いにとらわれて、結局、同じであるということに気付かない、というのが、愚かな猿たちですね。

さて、中国ではこの四字熟語は今でもよく使われますが、残念なことに、長い時間が経ち、いつかその出所が分からなくなり、もともとの意味がもうひとつの四字熟語、「朝秦暮楚」と間違えられたのです。

これはおそらく言葉の構造が似ているからでしょうね。「朝秦暮楚」。これも「四分五裂」と同じように、戦国時代にまつわる言葉です。戦国時代に林立する国々の中で、秦と楚が一時的に強かったのです。弱い国が自らの勢力を保ち、存続するためには、秦と盟約を結んだかと思うと、また、それを破り、楚と連合するようになったことが出典です。つまり、考えがころころ変わって定まらないことを表します。

というのは、現代中国語では、「朝三暮四」は、「朝秦暮楚」と全く同じ意味で使われているということです。言葉の意味が変わって、ちょっと残念ですが、これを考察することが面白いですね。

「中国国際放送局」より

中国国際放送局

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