「中国式現代化と中日の協力」学者対話会、北京で開催

2024-07-26

第20期中央委員会第三回全体会議(三中全会)が今月18日まで開催され、中国の中長期的な経済政策が各国から注目されている中、中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)が25日、北京で「中国式現代化と中日協力」をテーマとする学者対話会を主催しました。今回の対話会では、CMGの慎海雄台長がビデオ方式であいさつし、北京大学経済学院の汪婉特任教授、清華大学野村総研中国研究センターの理事を務める川嶋一郎副センター長、株式会社チャイナウェイの尹昌来代表取締役社長、東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授、清華大学・社会科学学院の張小勁教授と、対外経済貿易大学国際経済研究院の西村友作教授がパネリストとして参加し、「中国改革のさらなる深化」「中国式現代化の実態」をめぐり、日本との関連性について話し合いました。

△CMGの慎海雄台長がビデオあいさつ

慎台長はそのあいさつで「CMGはこれからも率直に深く交流し、手を取り合って前進し、使命を共に担い、人類運命共同体の構築を共に推進し、人類のより美しい未来を共に切り開くことを期待している」と語りました。

対話会では、パネリストたちが中国の貧困地区の実例を踏まえて、中国式現代化についての意見や見解を交わしたほか、「新たな質の生産力とは何か」と「今後の中日協力の行方」をめぐる展望についても語り合いました。

△北京大学経済学院の特任教授 汪婉

北京大学経済学院の汪婉特任教授は、「中国式現代化」の具体的な事例として中国の自動車産業を取り上げて説明し、今後の改革の注目点は「成長エンジンを従来の『高度成長』から、高いレベルの発展、新たな質の生産力へ転換することだ」と話しました。

△東京大学社会科学研究所の教授 丸川知雄

リモートで参加した東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授は「2013年(第18期三中全会)の決定との大きな違いは、今回の決定の中に産業政策の要素が多く入っていることだ。戦略的新興産業の振興に加えて、量子計算、6Gなどといった未来産業の振興、デジタル経済の振興なども書き込まれている」との認識を示しました。

△清華大学野村総研中国研究センター理事・副センター長 川嶋一郎

清華大学野村総研中国研究センターの川嶋一郎副センター長は今回の三中全会のコミュニケについて「国家運営全般にわたる、非常に広範なものだ。私はコンサルタントとして、これまで地方政府の産業政策や企業の事業戦略を支援してきた。『地方の発展』や『企業のイノベーション』に関心を持っている。コミュニケでは、この 2 点について触れられている。具体的にどんな政策が進められていくのか、今後の動向を注視していきたい」と期待を寄せました。

川嶋副センター長と清華大学の張小勁教授は中国の農村部に何度も実地調査に出向き、中国式現代化の現場をこの目で見てきました。川嶋副センター長は、身近なものを活用し、自分たちの置かれた状況を少しでも良くしようとする工夫=「身の丈イノベーション」にも触れ、「『身の回りの不便、不満、不安を少しでも改善しよう』とする気概と実践が社会に浸透していることこそ、中国のイノベーションや経済発展の原動力になっている」と話しました。

△清華大学・社会科学学院の教授 張小勁

張教授は「『中国式現代化』『新たな質の生産力』『質の高い発展』は、過去10年にわたる中国政府と人民の自己反省と自己総括の結晶である。その中で、習近平総書記が新たな概念として提唱した『新たな質の生産力』は、デジタル化や人工知能が急速に発展する時代に応えるものであり、未来を見据えた長期的指針となる」と語りました。

△株式会社チャイナウェイの代表取締役社長 尹昌来

株式会社チャイナウェイの尹昌来社長は「三中全会は全人代、そして第14次五カ年計画と一緒にセットで全体を俯瞰しないといけない。今回の発表を見ると、来年の全人代、そして第15次五カ年計画の方向性がある程度見えてきているのではないか」とした上で、「中国式現代化」の推進にも今後の中日協力にも「和而不同(和して同ぜず)」という理念が適用されるとの見解を示し、協調しながら差別化を求める発展の重要性を強調しました。

△対外経済貿易大学国際経済研究院の教授 西村友作

対外経済貿易大学国際経済研究院の西村友作教授は「中国の経済が発展していくには民間企業のイノベーションが最大の活力になっていく。民間企業ができるだけ自由にビジネスができるような環境を、もちろん(必要な)規制をかけながら、安全安心という部分を担保しながら、自由にイノベーションが生まれるような環境を作ってやることによって、どんどんとイノベーションが生まれ、中国経済の発展につながり、ひいては、国民全体にその果実が行き渡るのではないか」と分析しています。

△北京のスタジオでパネリストたちが議論を展開

パネリストたちはまた、産業、文化、農村振興、高齢化社会、健康、エネルギー、人的往来などさまざまな面から、中日両国が今相手から学べるものや両国協力の在り方について率直に意見を交換しました。

汪教授は「『新たな質の生産力』の実現には、より高いレベル、新しい質の『開放』や『国際大循環』も不可欠だ。これは、中国でビジネスを展開する日本企業、外資企業にも大きなチャンスになる。一方ではグローバル化する過程で、日本企業がいかにして『国際大循環』の能力を高めたのかなど、中国には学ぶことも多い」と指摘しました。

西村教授は「中国には日本の25倍の国土があり、人口も10倍以上で、まだ解決できていない社会課題もある。今後、改善しなければならない部分で、日本がこれまでに培ってきたノウハウが活かせる。その反面、デジタル分野やスタートアップ分野では、中国に学ぶところが大きい。中国に住んでいると、多少の失敗やエラーを受け入れやすい(環境)だ。これが日本だと、どうしても完璧を求めたがるところがある。新しいサービスに対しては、もうちょっと寛容になって、受け入れるような心構えが重要だ」と話しました。

丸川教授は、人類共通の最大の課題である「脱炭素化」に向けた両国の取り組みについて「日本は、中国がなぜこんなにスピーディーに再生可能エネルギーを増やせているのか?なぜスピーディーにEVに転換できているのかという点について大いに学ぶべきところがあるので、中国の方が先に(脱炭素社会を)達成するかもしれない」とした上で、「日本が世界に誇れるのは介護保険だ。2000年に介護保険が導入されたが、すでに普通の人が入れる制度として定着している。日本は世界に先駆けてこの仕組みを実践しているため、これから高齢化社会を迎える中国にとっても参考になる」との見解を示しました。

尹社長は中日の違いについて「顕微鏡と望遠鏡」「商人と職人」といったメタファーを使って、「中国は几帳面(顕微鏡)な着眼点を大事にすべきで、日本はシステム的(望遠鏡)に対応していく姿勢も必要だ。また中国は、物作りにこだわり、ある分野に関して深掘りする職人文化を学ぶべきで、日本は、良いものを作るから売れるとは限らず、売れるものを作ることも大事だという商人文化も学ぶべきだ」と、ユーモアたっぷりに説明しました。

川嶋副センター長は「日本人の頭の中ではコロナ前の中国で止まってしまっているから、コロナ後もこんなに変化が起きているということをぜひ中国に来てもらって自分の目で見ていただきたい。そのためには相互の人的往来が可能になり、もう一度その関係を再構築していく必要がある」と、両国の人文交流の重要性を改めて強調しました。

さらに、パネリストたちはそれぞれに社会問題を抱えている中日両国は互いの経験を参考にしながら、今後もより交流を深め、協力ウィンウィンの関係を築いていくことが非常に大事だという見解で一致しました。(ミン・イヒョウ、坂下)

中国国際放送

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